この行為は祈りに似ている。
 おまえに触れる度にそう思う。
 オレにはもう、それすら許されない。








  サウダージ








 「行かないよな?」
 掠れた声で、呟くような問いかけ。
 オレを見つめるナルトの目元は僅かに赤い。
 『嬉しい時にしか泣かない』なんて言ってるくせに、オレの前ではそれ以外で泣く事が結構多いこと。
 きっと自覚はないんだろう。
 おまえに快楽の涙を流させるのは、オレだけ。
 「サスケ」
 まだ力の入らない腕をオレに向かって懸命に伸ばして。
 その手を取ってやると、青い瞳がほんの少しだけ和んだ。
 「何処にも行かない」
 指先にそっと口付ける。
 伝わってくる震えは、安堵か不安か。
 「オレは、ここにいる。・・・・おまえといる」
 「ホントに?」
 「本当に」
 「よかったぁ」
 綻ぶように、ナルトが笑う。
 こいつがこんな風に笑うのを見るのは、随分と久しぶりだった事に気が付いた。
 そして、これが最後。





 「おまえを置いて行くと思ったか? 信用ねえな」
 「・・・・信じてるってばよ。バカサスケ」
 からかう口調に拗ねて背を向ける。
 振り向かせて軽く唇を合わせれば、小さく睨んで、それでも大人しく腕の中に収まった。
 「でも、心配したってば。なんかさ、あん時のおまえ、すげー本気っぽかったし」
 「勝負だから本気出すのは当たり前だろう。おまえの方こそ、本気でオレを殺しそうな勢いだったじゃねえか」
 当たってたら死んでたぞ、と言ってやれば、お互い様だってば、とおまえが返す。
 交わされる、たわいないやり取り。
 おまえはオレの胸元に潜り込んで、オレはおまえを身体ごと抱きかかえて。
 直に感じるぬくもり。安らぎ。イトシイ。
 全部、これで最後。




 
 「愛してる」
 そっと囁けば、眠りに落ちかけていたナルトは目を見開いた。
 何を言われたか咄嗟に飲み込めなかったらしく、ぱちぱちと数回まばたきをして。
 それから、ぱっと顔面に朱を上らせた。
 「な、なに言ってんだってば!」
 「おまえは?」
 ゆっくりと抱き込めば、いつもより高く感じる体温。
 オレを見る潤んだ瞳。
 早く。
 どうかオレに最後の慈悲を。
 「・・・・すき」
 消え入りそうな呟きごと、微かに震える唇を塞いだ。
 




 許してくれとは言わない。
 オレを忘れてくれなんて、もっと言えない。
 結局オレは、オレを捨てられずにおまえを捨てる。
 それでも。
 オレは、おまえと幸せになりたかった。
 本気でそう思っていた。
 なれると思ったこともあった。
 ・・・・・だけどおまえは、そんなこと知らなくていい。





 おまえは、嘆くだろう。怒るだろう。オレを憎むだろう。
 愛の言葉を囁きながら、永遠を誓いながら、すべてを裏切るこのオレを、決して許さない。
 おまえはウスラトンカチだから、きっとそのうち分からなくなる。
 オレの言葉の、おまえを抱いた腕の、夜毎の睦言の、どこからどこまでが真実だったのか。
 それとも、すべてが偽りだったのか。
 芽生えた疑念はおまえを蝕み、苦しんで苦しんで苦しんで。
 そして、オレを追わずにはいられなくなる。
 




 『愚かなる弟よ』
 今になって。
 少しだけあの男の気持ちが分かる。
 大切な存在に、抜けない楔を打ち込むということ。
 この世界に、オレを決して忘れない、いつかオレを殺しに来る存在が、確実に在るということ。
 背筋が粟立つ程の、この陶酔。





 眠るおまえを置いて、寝台から滑り出た。
 見慣れたおまえの部屋。壁の落書き。片隅の植木鉢。おまえの匂い。
 「愛してる」
 眠りながら微笑む暖かな唇に、最後の口付け。
 本当に、これが最後。










 あいしてるあいしてるあいしてる
 おまえを捨てていくオレのたったひとつの真実を、
 どうか、おまえだけは信じないでくれ。












 サスケ、ナチュラルに嘘つき野郎です(笑)。
 どうして私が書くと、サスケ確信犯っつーか、開き直って突っ走ってしまいやがるのでしょう。本当に何様だ、おまえ。
 そこに至るまでの葛藤とか、びみょーで繊細な心の襞〜みたいなのは、さよに任す(笑)。
 突然思い付いてがーっと書いた話だし、直前の話読んでないので(爆)、おかしな所はありまくりですが、次のWJが出たらアップする気が失せそうなんで、見切り発進。
 (あゆりん)


捨ててくくせに、アイシテルっていうのはやっぱりむかつくなー。
しかも行かないっていいつつ去っていくんかい。ヤナ奴だなー。
わかんねーよ、サスケ・・・・。(さよ)
 

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