「力を使っちゃいけないよ。」
蛇の呪印が巣食う体に封印を施した上忍が言う。
「大切なものを無くしてしまうからね。」
LOOSE
「サスケ君は変わったわ。あの子のせいで。 心を持ってしまった。
このままでは私の役に立たなくなってしまう。
せっかく丁度いい復讐人形だったのに。」
「ナルト君、ですね。」
「そう、必要ないものは取り除くべきだわ。」
「あの子を始末しますか?」
「それでは逆効果よ。まあ、みていなさい・・・」
「では・・・」
長髪を後ろで束ねた青年が軽く一礼してその場を去る。
「力を使うな、だと。馬鹿言うな。」
「大蛇丸の呪印は特殊だ。チャクラを使わなければ進行は遅らせることが出来る。
だが完全には治らない。」
「知ってんのか?」
「昔何人かやられたからね。術者が生きている限り取り除く術はない。」
淡々と上忍が告げる。
「冗談じゃねえ・・」
睨みつけるサスケ。
「だろうね。」
「サスケどうしちゃったのかなあ。」
競技場で試合を見ながらナルトは呟く。
「大丈夫、よ・・」
隣りに立つサクラが自分に言い聞かせるように答える。
『あいつには言うな。』
サスケがそう言ったから、あのおぞましい力をもたらした呪印の事を喋る訳にはいかなかった。
(サスケ君は、ナルトにあの姿を見せたくないんだわ。
・・・ほんとに大事に思ってるのよね。)
そして目の前の曇った顔をした少年の黄色い頭をなぜた。
泣きそうな何か言いたげな顔で見上げてくる。
(ちょっとだけ、分かる気もするわ。)
この子にも、サスケはきっと特別なのだ。
力を使うと、大切なものを無くしてしまうよ。
「おまえはね、本当に大切なもの、多分ナルトのことをね、だんだんと忘れていく。」
「俺があいつを忘れる訳がない。」
即座に返る答え。大切なもの、というのは否定しない。
まだ首の傷も癒えていないのに、間違えるはずはなかった。
意識の遠のくあの時、浮かんだのは、父母でも憎みぬいた兄でもなくただ一人だったのだから。
「そういう術なんだよ。」
橋が完成した夜、波の国ではちょっとした宴会があった。
酒を飲んだナルトがふらふらと外へ行くのを追った。
月明かりの下、特訓した木の下で、追いついて。
軽い口喧嘩から告白する羽目になっちまって。
誘われるようにキスをして、求め合った。
無くしたなにかを埋め尽くすように、貪る様に。
あれから幾度となく夜を重ねて。
やっと見つけたのに。
「サスケ!」
ぱたぱたと駆け寄ってくる。頭半分くらい背の低い、青い目の少年。
「なんだ、俺がいなくて寂しかったのかよ。」
「・・・わっけねーだろ!」
途端に真っ赤になる顔。
(俺は会いたかった。)
ふっと、笑う。
「何馬鹿にしてんだってば!」
(可愛いな。こんな膨れっ面も)
こいつが居なければ、おれは復讐者に戻るのだろうか。
「・・・・・・・!!」
自分の呻きで目が覚める。真夜中の病室。呪印が疼いた。
薬品の匂いのたちこめる暗闇の中で、再び眠りにおちるのが怖かった。
失ってしまう。お前を。お前の事を。俺は。
「・・・・ん・・・?・・サスケ?」
人の気配で目が覚める。
月明かりのなか、開いた窓にサスケが腰掛けてこちらを見ている。
「おまえ、病院じゃ・・・」
なかったのか、起き上がって話し掛けた言葉は乱暴なキスでかき消され、そのまま布団に押し倒される。
「・・・・んんっ」
いきなりのことに抗議しようとして、目を見たらなにもいえなくなった。
ほんとに泣きそうな顔をしていた。
涙なんて一粒も流れてなかったけど、でもきっと泣かれた方がまだましだった。
「サスケ・・・?」
こいつは何も言わないから、きっと今度だってなんでって聞いても答えてはくれないから。
助けてなんてやれないから。だから。
抱きしめてやるしか、できなかった。
「会いたくて、抜け出してきた。」
「無茶すんな。」
「お前には言われたくねえな。」
耳元で囁かれる。
やっと安堵したといった感じの声に戸惑う。
サスケは、なにに怯えているのだろう。
「や・・・もっ・・・おまっ・・・病人のくせして・・・」
「病気はしてねえぞ。安心しろ。」
その日は執拗なほど何度も求められた。
サスケがなぞる身体が、指に合わせてかすかに跳ねる。
「・・・あっ・・」
気が変になるほど体を重ねて。
だけど、サスケはずっと、泣きそうな顔をしていた。
俺は、見ない振りをした。
「お前を・・・・・失いたくないんだ。」
嗚咽のように吐き出したその言葉を、俺は聞かない振りをした。
失ってしまう。お前を。
失ってしまう。全てを。
術を使うたびに呪がはしる。
同じ目線にあったはずのナルトが、
守らなくてはならないと思っていたものが。
いつの間にか俺を庇うようになっていた。
サクラにさえ同情されて無様な醜態をさらす。
ざまあない。
情けなさに反吐がでそうだった。
「サスケ」
心配そうに見るその視線がつらかった。
「サスケ、笑わなくなったってば・・・・・。」
寂しそうに笑いかけた。
だけど、そいつはもう、俺の力なんかなくても。
・・・・・・・・・その相手を倒す事は俺には出来なかった。
こいつは、もう、俺なんか、要らないのだと。
ナルトの視線から逃れるように、俺はカカシの特訓に没頭した。
強くなりたい。
強くならなければお前を守る事が出来ない。
強くなりたい。
強くない俺など生きている価値もない。
強くなれば、俺はあいつに、復讐できる。
この、力が、あれば。
失っていく。
愛しいと多分思っていた気持ちは、まだ覚えてはいたけれど。
冷めていく、そんな感じに近かった。
「サスケ」
俺は、「千鳥」を覚えた。
もう、声は届かない。
「カカシ先生。行って来るね。」
ぎゅう、と抱きついた。
「サスケに会えなかったから、よろしく言っといて。」
火影が死んだ。
自来也とともに里を出ることになって、探したけどサスケと会う事は出来なかった。
(避けられてる、ってばよ。絶対。)
そう思うと涙が出そうだった。
(アイツ俺のこと嫌いになったんだってば。)
「ん、言っとくよ。じゃ頑張って来いよ、ナルト。」
大きな手がくしゃくしゃと頭をなぜる。
「大蛇丸様、もう少しですね。」
「あせる事はないわ。そう、私もまだ傷が癒えるまでは動けない・・・・・。」
31000を踏まれた日本様からリク頂きました。「記憶喪失サスケ」
「愛するナルトの事を忘れるサスケ」というお題でしたができあがったのは
「ナルトを愛する事を忘れるサスケ」・・・・、これって受け取ってもらえるんだろうか。
日本様ごめんなさいです。(泣)
しかも「記憶喪失じゃないじゃん。」というあゆりんのつっこみをくらいました。ぐえ。
(さよ)
「想い」を忘れるんであって「存在」を忘れるわけじゃないよな、このサスケ。
通常、記憶喪失ってゆーとその逆パターンが多いけど、でも私はこれはこれでよいと思います。こーゆーギリギリ一杯のサスケって大変好みだしv リクに添えてるかはびみょーだが。
ただ、この先の展開が気になるんだけどねえ。各自で適宜ハッピーエンドをご想像ください(笑)。
(あゆりん)
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