日々是好日
「サースーケー」
満面の笑顔で走り寄ってくる愛しいあの子。
サスケにとっては、正しく長年の夢だった光景だ。
この笑顔を日常的に享受できる状況にまで持って行くには、それはもう筆舌に尽し難い苦労があったりしたが、とりあえずここでは割愛することにして。
やっと手に入れたこの特権、勿論死んでも手放す気はない。
ないのだが、仮にも相思相愛と呼ばれる間柄になってからそれなりの日数が経つうちに、多少なりとも見えるようになったものがある。
段々近付いてくる眩しい笑み。
そりゃもう、諸手を上げて迎えたい気持ちは満々なのだが。
しかし、これは。
(何か突拍子もない事、言い出しやがる時の顔だ・・・)
「サスケ、オレのどこが好き?」
ああ、やっぱり。
「・・・そんなの、聞いてどうするんだ」
わくわくと期待一杯に覗き込んでくるナルトから、サスケはふいと目を逸らす。
「だって知りたいじゃん。なあなあ、どこが好きだってばよ?」
「理由なんか、ねえよ」
「ぜんっぜん、何にもねーの?」
「何度も同じこと言わせんな」
「・・・おまえってば、オレの事好きじゃねーんだ!」
また始まりやがった。
それがサスケの正直な感想。
わがままなのも甘ったれなのも、もうどうだっていいが、つーか自分限定ならむしろ大歓迎なのだが、この早とちりの挙句勝手に拗ねまくる性癖だけはどうにかしてもらいたい。切実に。
でなければ、こっちの神経が持たない。
さんざんごねられた末に「だいっきらい!」と最終兵器をかまされて、その度命が縮む思いをする身になってみろってなもんだ。
これが他の奴なら「うざい」と一言で切り捨てておしまいなのだが、この相手に限ってはそれが出来る筈もなく。
切り捨てるどころか、今現在、サスケの全能力は、やっとここまで築き上げたこのお子様とのコイビト関係を如何に維持発展させていくかに注がれているのである。
しかし、生来の口下手、というか、感情を言葉で表現する能力を著しく欠如している彼にとって、それは多大な困難を伴う事ではあった。
言い淀むサスケに、ナルトはぷうっと頬を膨らませる。
「だってだってだって、おまえ、オレの好きなとこ、いっこもないって言ったじゃん!」
おまえの国語能力はどうなっている。
そこまでドベでどうするんだ、一体。
なんて事は、思ってても口にはしないうちはサスケ。
一応、人並みの学習能力はあるのだ。
「んな事ひとっことも言ってねーだろ。そもそも『好き』に理由なんているか」
「そんな事ねーもん! それにおまえ、さんざんオレのやる事に文句ばっか言うクセに、好きなとこは言わないなんてズルイってば!」
それは文句じゃない。
予測不可能(考え無しとも言う)な行動の結果、にっちもさっちもいかない状況に陥る事が日常と化しつつあるウスラトンカチの身を心底心配しての言葉なのに。
自分が口が悪いというのは認めるが、ナルトには単にヤな事言われたという認識しかないわけで。
・・・予測はしていたけれど。
「じゃあ、おまえはオレのどこが好きなんだよ。そこまで言うならてめーが言ってみろ」
まさかできないなんて言わないよな?
半ば逆ギレしたサスケが詰め寄ると、怯むかと思いきや、ナルトはにいっと不敵に笑った。
「おう、言ってやるってばよ!
大いばりで胸を張る姿に、そうだこいつはこういう奴だったと、サスケは一瞬自分の認識の甘さを悔やむ。
が。
「オレはおまえと違ってぼきゃぶらりいがいっぱいだから、いくらでも言えるってば!」
ひどく楽しそうにあれこれ考えているナルトに、一体何を言い出すのやらと、少しばかり胸が弾むのは否めなかった。
「んっと、普段すげー意地悪でぶっちょづらだけど、たまにちょっとは優しいかもしれないとこ」
「優しくない時は好きじゃないんだな」
「じゃあ、ムカツクくらい何でもできるクセに、更に修行なんかしちゃうケンキョだかイヤミだか分かんねーとこ」
「ケガでもして動けなくなくなるか、さぼり癖でもついたらダメ、と」
「無駄にやったらキレーな顔!」
「顔に傷が付いたらおしまいか」
「・・・もー、いい加減にしろってば!」
ああ言えばこう言う。
せっかく色々並べ立てたホメ言葉に片っ端からケチをつけられて、とうとうナルトが爆発した。
まあ無理はないなとサスケは思う。
これが自分でも、一所懸命絞り出した言葉をこれだけあっさり一蹴されたら収まりがつかないだろう。
上手いやり方じゃない事は認める、が。
(他にどーしろってんだ!)
目をきらきらさせて、頬なんかうっすら赤くして、心底嬉しそうにあんな台詞を吐かれたら、はっきり言ってここが外だとか人目があるとかそんな歯止め、全て吹っ飛ぶ自信アリ。
しかし、当然のながら内なるサスケの葛藤なんて知る余地もないナルトにとっては、ひたすら不満たらたらで。
「自分は言わないくせに、イイ態度だってばよ!」
「今更、言う必要もねーだろ」
「む、何だってば、それ! オレには言わせたくせにっ」
「てめーが勝手に言ったんだろうが。‥‥じゃなくて」
サスケはふうっとため息をつくと、がしがしと頭をかいた。
『言わない』のではなくて『言えない』のだと。
甘い言葉なんて容易く吐ける性格をしていない事くらい、これだけ付き合いも長くなればいい加減認識してほしいのだけれど。
こうなったら目の前の相手が中々引かないのは重々承知しているし、このまま行くと「大嫌い」攻撃が始まりそうで、それはさすがに避けたい。
諸々を瞬時に頭の中で秤にかけて、サスケはナルトに向き直った。
「おまえ、さっき色々言ってたけど、それだけじゃないだろ?」
「それだけって?」
「性格とか顔とか、そういうの関係無しに、つーか引っ括めて、オレのこと好きだろう」
途端に。
ふくれっ面のナルトの顔がぱあっと赤くなり、目に見えておたおたと視線があちこちに泳ぎ出す。
「な、な、何言ってんだってば! おまえってば何様?!」
甘い言葉は吐けなくてもこういう事は言えるあたり、自分でも何様とは思うが、単に他人の事だったら何だって言えるというだけの話で、それよりこれだけあっさり引っかかるなんておまえの方が問題あると思うぞ。
なんて事は、とりあえず口には出さない。
「違うのか?」
「〜〜〜うー、お、おまえこそ、そーじゃないのかよ!」
「分かってんなら、聞く必要ないだろうが」
言いながら、サスケはナルトをふわりと引き寄せる。
「ドベでウスラトンカチでどうしようもなく手のかかるガキなんて、まるっきりオレの好みじゃねえよ」
「それ全然ホメてないってば」
「本当の事だろ。・・・だけど」
軽く額にキス。次いで両頬、最後に軽く唇に。
「おまえ以外に、こんな事しようなんて思わない」
囁いて、そっと覗き込めば、ナルトはまだどこか不満そうに、むうっと唇を尖らせていたけれど。
くしゃりと髪を撫でると、ばふっとサスケの胸に顔を埋めた。
「もっと撫でてってば」
言われるままに金色の髪に指を絡めれば、ようやく、へへーと満足げな笑みが零れる。
「サスケっていっつも殆どムカツク事しか言わねーけど、頭撫でるのうまいよな。・・・ぎゅってすんのも。これって、カラダの方が正直ってヤツ?」
「・・・随分違うと思うぞ」
「えー、そうかなー? どう違うんだってばよ」
またぞろ追求が始まりそうな気配に慌ててぎゅうっと抱き込むと、ナルトはごろごろと喉を鳴らす音が聞こえてきそうな表情で目を細める。
背中に腕を回してしがみついてくる身体に、どうやら今日もどうにかナルトの無理難題を躱せたらしいと、サスケは安堵の息を吐いた。
「おまえさあ、オレだったら何でもいいくらい全部好きだってんなら、最初っからそう言えばいいってば」
「言えるか!」
油断してる時に手痛い反撃を食らわせるのも、この子の得意技。
結局何をどうしたってウスラトンカチには勝てないのだと、納得するのも悲しいものがあるけれど。
「オレは大好きだってばよ?」
・・・負けてもいいかもしれない。
些か終わった事を考えながら、とりあえずは抱き締める腕に力を込めて、ちっちゃなぬくもりを堪能する事にした。
「てか、サスケ君結局言ってないじゃない。ナルトも甘いわね」
「どうでもいいけど、そろそろ解散命令出したいんだけどなあ」
既に夕闇が迫る刻限。
手持ち無沙汰に座り込むカカシとサクラの眼前で繰り広げられている光景は、日常すぎて最早止める気も起きない代物だ。
というか、うっかり止めたら馬に蹴られて瞬殺されそうな勢いで。
「うーん、あいつらのスキンシップレベルも着々と上がってきてるねえ」
既にこれを見ないと一日が終わらない気すらするあたり、慣れというものは恐ろしい。
が、一応物事には限度というものがある。
放っとくとどこまでいくか分からない奴らを、如何にあしらって如何に速やかにお帰り頂くかというのが、ここ最近の7班(うち2名)の最重要任務だったりした。
そしておそらく、その任務から解放されるのはスリーマンセル解散まで不可能だ、というのがその他2名の一致した見解であって。
「幸せなのはいいけど、もう少し状況も考慮してほしいわよね」
忍者失格!と言い切る少女に、上忍は大きく頷いた。
なんつーか、おバカな話だなあ。
最近文章の書き方忘れちゃってリハビリ中なので、いろんなツッコミ所はお見逃しください〜。(土下座)
以前、封神で似たようなネタ書いた事がありますが、キャラ違うとほんとにまったく違う話になりますね。うーん。
どうして悪口はぽんぽんぽんぽんでてくるくせに、いえないんでしょーねー。サスケには修行して欲しいよねー。(さよ)