「うおおおお!」
懸命に走る。眼前のゴールテープ、相手はまだ来ていない様。俺の勝ち?やった。
なんとしても負けるわけにはいかない。
だって負けたら・・・・

ゴールへ手を伸ばした瞬間。
「遅かったな、俺の勝ちだ。」
どこから現れたのかテープの先でにやりと笑う黒づくめの少年。
「お、お前どこかくれてたんだってばよ。」
「んなこたどうでもいいだろ・・・。待ちくたびれたぜ。ナルト・・・・いや、なっとう。約束はおぼえてんだろ・・・?」
「・・・やくそく・・・あ、あれ冗談だろ・・・?」
ナルト、といわれた背の低い少年は心底嫌そうに後ずさりする。
「勝負に負けたら、俺と付き合う。」
「う」
「そしてうちはの嫁になれ」
「そそそそそこまで言ってねえだろ!!!!」
「俺はそのつもりだからあきらめろ。手始めにまずこれを着けてもらおうか。」
そう言ってごそごそと出してきたのはブラジャー。

「ややややややだってばよー!!!!!」















「ヤナ夢見たってば・・・・・・・」
土曜日の気持ちのいい快晴の朝っぱらから、なんて夢を見たんだろう。
冷たい水で思いっきりばしゃばしゃと顔を洗ってナルトは溜息をつく。

「・・・・・・デート・・・・ね。」

顔を上げて壁を見やるとカレンダーの今日の日付に赤い丸印。先週も先々週も。

サスケの正体あばくんだ、と意気込んで女に化けたのが1月前。
何故だかその姿に惚れられてしまって(胸をおっきくしたせいだと思う。)
その後挑発に乗せられて「10回貸し作るか勝負に勝ったら1回デート」なんて約束して。
毎回きっかり金曜日には
「貸し10回・・・・・じゃあ、明日な。」
俺を負かしてにやりと笑って、帰っていく。あーもー憎ったらしい。

「10時にゆーえんち前、かあ。」
トーストを焼く。
「・・・・・ジェットコースター乗れるかな。」
牛乳をコップに注ぐ。
「どんなかっこにしようかな・・・。」
カシャン、トースターがあがる。
「べ、別に楽しみなんかじゃないってばよ!」
ペタペタとバターを塗って。
「遊園地が好きなだけで・・・」
パンをかじる。
「サスケは好きじゃないもん。」

この里は「うずまきナルト」を受け入れてくれない。
遊園地だって例外ではない。
「その身長で乗せちゃいけないって言われてるんですよ」
十二分に身長は制限を越していた。自分より小さい子が親に連れられて入場していく横で食い下がる自分に。
「保護者とか責任がとれる人と一緒でないとキミを乗せてなにかあったら困るでしょう?うずまきナルト君。」
その言葉に悔しくて腹が立ってなんにも乗らずに帰った。
あれ以来遊園地にはイルカ先生に一度連れて行ってもらっただけで。
(イルカ先生もずいぶんけんかをしたみたいだった。)
でも「鶉なっとう(女の子に化けたときにつけちゃった名前)」なら、ダイジョーブ。
遊園地の人はむかつくけど遊園地はすきだもん。
今日はたくさん乗るんだもんね。

はっと我に帰る。
「・・・・・・だから、楽しみなんかじゃないんだって!」

(好きじゃないのにおれってばほんと律儀な奴。)
頭を抱えながら鏡の前でぽん、と姿を変える。
昨日帰り際にショーウインドウで見かけた可愛い服。肩ひもリボンのチューブトップの淡い緑色のワンピ−スに白い上着。靴は少し歩きづらいけど赤いリボンサンダル。胸はちょこっと小さめにしてここだけぶっつい生地にして、これでおっけ!

鏡の前でくるりと回って
「完璧だってば!・・・・・ってなにやってんだろ、俺・・・」









「遅いぞ、ウスラトンカチ。」
約束の場所で壁にもたれて腕組みしてホントえらそーでむかつく。
履き慣れない靴のせいで10分も遅くなったなんて言い訳するのもいやで唇を尖らせて睨みつける。
サスケもじいっとこっちを見るから、けんかなら買うぞ!構えると、まじまじと眺めて、ふ、と笑う。
「な、なんだよ。なんかおかしいトコあんのかよ!」
「いや、別に・・・・似合ってるぜ、それ。」
かあ、と顔に血が上って混乱して口走る。
「ま、まあな俺なら何着たって可愛いに決まってるってばよ!」(何言ってんだ、おれ)
「それもそうだな。」
さらりと流されて、二の句もつげない。
(こいつ絶対絶対スケコマシ!)

「とっとといくぞ、ドベ」
「ドベじゃねえ!」
「いいから、いくぞなっとう。」







「はー、つっかれたー」
さんざ乗り物にのりまくって満足げな顔でベンチに座りこむ少女に
「アイス買ってくるからおまえちょっと座ってろ」
黒髪の少年が横に立ったまま見下ろしながら言う。
「え?俺も欲しいから一緒行くってば。」
「足痛いんなら休んでろ、って言ってんだよ。」
心配しなくてもお前の好きそうな奴選んでくるから、と言い残して見えなくなる後姿。
「やっぱスケコマシ・・・?」
痛くなった足をぶらぶらさせながらおとなしくその後姿を見送った。




(サスケってなっとう好きなんだ。でもおれなっとうじゃないし。だからサスケだっておれのこと好きじゃないし・・・)

(・・・おれだってサスケ好きじゃないし・・・)

下を向いて足をぶらぶらさせていると目の前にすっとソフトクリーム。
「待ったか?」
受け取ってじい、とみあげる。
黒い髪、黒い目、通った鼻、薄い唇。
「ううん・・・」
キレイ、一瞬そう思った。なんて死んでもいえない。
「・・・・・おいしい」

(このままじゃだめだってばよー!おれってば、おれってば・・・・)
このままいくと今朝見た夢が正夢になってしまうではないか。


次々と絶叫マシーンに乗ってもサスケは全然顔色も変えない。
「おまえキャーとかワーとかいえよ、可愛くねー。」
「きゃー、わー。・・・・ほら言った。」
「むきー!むかつく!そうじゃなくて楽しんでんのかわかんねーっていってんの。」
「おまえはキャーキャー叫んで楽しそうだからな。俺はお前見てるのが楽しい。」
「面白くて悪かったな!」
「・・・・・可愛いって言ってんだろ。」
「言ってねえよ!」
サスケをへこませる事ができるものはなにかないだろうか。
こう、ぎゃふんとか、参ったとか・・・。
遊園地マップを一生懸命に探って、あるところでぴたりと視線がとまった。
「サスケ、お化け屋敷って好き?」
「いや・・・それよりお前にはこっちのがいいんじゃねえのか?」
少年は地図の中のキャラクターショーをやっているところを指差す。
「おれ、お化け屋敷いきたいってばよ。」
サスケはすこし眉をひそめて怪訝そうな顔をして、横を向いて少し考え込む。
「・・・・気はのらねえがお前がどうしても行きたいってんなら付き合ってもいい。」
「うん!」

今の反応はビンゴ!サスケってばきっとお化け嫌い。
もうヤダあ、とか泣き出したり、出口に向かって走り出したり、泣いて座り込んでおもらししちゃうのかも。
キシシ、みてろよ。

意気揚々と入場する。
最初のうちはお化けの絵が描いてあるだけの薄暗い通路。子供だましだ。
サスケは絵をじ一と睨みつけたりきょろきょろ辺りを見渡したり落ち着かない様子。
(きっと怖いんだな。)
横を見てぷぷ、とふきだしそうになるのを堪えて前に向き直り
「ぎゃあ!」
いきなり目の前になにかが落ちてきた。
顔のある提灯。下らない仕掛けだが驚いたのは事実。
「びっくりさせるなっての。なあ。」
そういって暗闇の中サスケの方を見るとサスケも固まって動けない様子。
「サスケ?おい?」
揺さぶろうとしてはじめて自分がサスケにしがみついてしまったことに気付いて飛びのく。
「わ、わり・・・・きゃ・・・・」
なにかぬるりとしたものに足をすべらせ尻餅をつくと足を掴む白骨死体。
「いやー!!!ぎゃー!」
「落ち着け、ただの模型だ。さっきのもコンニャクみたいだし。」
糸をつけたこんにゃくに足を滑らせると足を掴む位置に模型。
「あ、悪趣味だ・・・」
「だから好きじゃねえんだかな・・・」

「いやー!目の前なんかうごいたってばよ」
「落ち着け!」
「きゃー!なんかさわったってば」
「コロス!」
「ぎゃー!」

サスケは溜息をついた。
お化け屋敷のスタッフとしてはこんなに騒いで驚いてくれるお客はそりゃ嬉しいだろう。諸手をあげての大歓迎だ。
これでもか、これでもかというほどナルトの周りにばかりお化けが寄ってくる。

「きゃー!きゃー!」
跳びはねて奇声をあげるたびにぎゅうぎゅうにしがみついてくる。
夏で、こんな薄着で、おまけに、・・・・ノーブラだ。はねるごとに柔らかいものが形を変えて押し付けられる。
(ちくしょう、理性がもたねえ!だからいやだっていったんだ!)
暗闇の中で、顔に長くて細い髪の毛がなんども触れて、そのたびに石鹸の匂いがする。
肩ひもなんかはずして押し倒してしまいたいのを必死で我慢しているうち、あることに気付いたがそのまま抱きつくに任せておいた。

出口につく頃には手なんかしっかり握って、今にも泣き出してしまいそう。

「・・・お前なんで平気なんだってば。」
出口に向かって歩きながら恨めしそうにナルトが言う。
「怖いなんていった覚えはねえぞ、くだらねえから嫌いなだけだ。痴漢も多いっていうしな。
 だいたい行きたいっていったのはお前だろうが。」
「・・・うー・・・」
「来週は動物園でいいか?」
「お前、おれとんなあちこちして楽しいの?」
「まあな」
ゲートをくぐる。
「今日・・・・・楽しかったわけ?」
「ああ。お前も楽しかったろ?」
偉そうな顔で振り向く。
「んなわけ、ねーだろ!」
そういって軽くぶとうとして手が止まった。
「・・・ほんとか?」
眉をよせ少し曇らせた顔は傷ついたようにみえたから。
「・・・・・たのし、かったってばよ・・・・・」
なんだかサスケにひどく悪い事をした気になって、嘘がつけなくなった。
もともと友達なんてほとんどいない自分。
こんな風に毎週毎週誰かが誘ってくれて一緒にいてくれて、それは不快ではなかった。
いつのまにか心のどこかで楽しみに思っていた。
笑いかける顔も優しくかけてくれる声も


(・・・・・・このままじゃ、だめだ、ってばよ・・・・・!)



「・・・・・・でもさ、あの、もうこれっきり!・・・・・・・これでお終いだってばよ。バイバイ!サスケ!」
キラワレモノのおれと一緒にいたらなんていわれるかわかんないのに。
それに、それに、おれは、オンナノコじゃない・・・!



夕暮れが薄闇に変わる。

突然サスケの目の前を駆け出す金髪。
最初に出会ったとき、その鮮やかな光景に立ち尽くした。
だけど、今追わなければ。
いつもの自分ならば去るものは追わない。だけどこいつだけは失いたくない自分の気持ちを知っているから。


「ナルト!」
叫んで追いついて、抱きしめた。狭い里だけど人目なんか気にしていられない。
「離せよ!」
「なんでだよ!突然ワケわかんねえよ!」
「おれ、なっとうじゃねえもん・・・・だからだめだってばよ・・・
 そのうちサスケの好きなボインボインの女の子だってぜったい現れるから・・・そゆのとつきあ・・・ばいいって・・・よ・・・」
「前にもいったろ・・・・別に胸が好きなわけじゃねえ・・・」
ぎゅうぎゅうと抱く腕に思いっきり力を込めた。
「まだわかんねえのかよ。」
「わかんねえよ!」
「俺だって自分でもワケわかんねえけど、お前じゃないと嫌なんだよ・・・・・」

「な、なっとうじゃなくても?」
「お前今の自分の格好分かってるか?」
「・・・ってあ!」
お化け屋敷で騒いでいるうちに集中力が途切れたのだろう、いつもの服。「うずまきナルト」。

「わ、わ、離せってばよ・・・」
慌ててもがいたけれど自分を捕らえる腕の力は込められたままで。
低く耳元で呟く。少し苦笑交じりの甘い声。
「別に今日だって最初っから「ナルト」でも構わなかったんだぜ。変化して来いなんて一言でも言ったか?」
「そ・・・・・だっけ。」
「・・・おまえ自分にヤキモチやいてんじゃねえよ・・・いっそ手っ取り早く体でわからせてもいいんだけどな。」
「ぎゃー!やめてやめてそこまで濃いのはいらないっ!謹んでお断りさせてもらうってば!」
「悪いけど俺もう決めたから。」
「・・・・・なにを!」
それには答えずにサスケはにやりと笑う。




サスケの奴ってひょっとしてさいてーで、女ったらしでどすけべでむかつくやつで
おまけに男までたらして
でもちょっとだけ優しくて
たくさんありすぎて正体不明。


だから、そのうち、正体分かるようになるまで、ほんのしばらく、偵察中。












「じゃ、これで勝負あり10回・・・・・明日映画館前な。」
「うー、・・・・・」
「お前これ観たいっていってたろうが。行きたくないってんなら」
ぴらりと出すチケット2枚。
「あー!い、いく、いくー!」
「10時。」
「・・・・10時。」
ことごとく、先を読まれてるようでなんか悔しいけど。
土曜日はいつも。
カレンダーには赤いマル。














キワモノナルコとりあえず、ここまで。ナルト落ちてるし。
サスケ君がなんかどっかとんじゃってるっていうか、ヘンな奴なんだけど、さよ、ヘンな奴も好きなんだー。(笑)
正統派サスケスキーの方ごめんなさいでしたー。
初対面の印象をずっと引きずるサスケ君。・・・・ってインプリンティングみたい。


 このサスケ、吹っ切れてていいわー(笑)。大丈夫、サスケスキーの私が大笑いしたから。
 いや、甲斐性あると思うよ。男でも女でもナルト嫁にする気満々みたいだし。(あゆりん)



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