おしまいの日


 
生きる物のない荒涼とした、鈍く白く光る結晶だらけの薄暗い谷。
竜騎士を味方にするために、こんなところまで来たけれども。
なにか、ひどくここへ足を踏み入れることをためらった。

なにかが、警告していた。
イヤダ、ヤメロ、コナイデクレ。

いまさら、何を失える?
どうせ、引き返せやしない。

それでも、奥へ進むにつれ、その警告は激しくなり。

もう少しだ。
秘薬の材料さえ手に入ればすぐに帰れる・・・

谷の奥で、月下草の花を見つけ安堵した。
これさえ、取れば・・・・。

「それじゃ、困るんだよ。」

突然、目の前に現れたのは、忘れもしない、宮廷魔術師。
「ウィンディ!」
身構えると、その脇にもう1人が現れる。


「!・・・・・テッド・・・・」

駆け寄りたくて。
だけど警告は止まない。
止むどころか、激しさを増して。

「ひどいよなあ。俺を置いて行っちまって。」

「おまえに”あずけた”それ、返してくれよ。」

頭が割れそうなほどの警告音。
キケン、キケン、キケン、・・・・・

「いやだ・・・」
右手を庇い。掠れる声を、やっとの思いで口にする。

にい、とわらって、テッドが近寄る。
クルナ、コナイデ、
武器を握り締めて。


ふ、と。闇に閉ざされた。
(・・・俺の声が聞こえるかい?)
テッドの声。
(一生のお願いだ・・・
 おれが これから することを、許して欲しい・・・)
そのときのテッドの顔を、僕は忘れない。
泣きそうな、微笑み。
それは、300年生きてきた証のように、他の誰にも多分することのできないような。

幻覚は掻き消えて、テッドが歩み寄る。
「ソウルイーターよ、かつての主として命じる。」
「テッド!!」

右手の紋章が光を放ち。テッドの魂が、引き込まれていく。

その感触は、僕を総毛だたせるほどの。
触れられるほど目の前で、なぜ、僕はおまえを失う?

「───テッド!!!」

なんで、こんなことをする?

計画の失敗したウィンディが去って。

僕の腕の中で、テッドがとても小さくなって。
「そんなかお、するなよ・・・。」
笑いながら、
「俺の分まで幸せになってくれ・・・。」
頼むから、逝かないで。逝ってしまわないで。

グレミオのときも、父の最期のときにさえ流れなかった涙が溢れて。
歯の根が合わなくて、言葉にならなくて、
ただ、ゆっくりと熱を失う体に縋り付いて小さな子供のように泣いた。

たった、ひとり、を、
最後の心の砦を失って。


望みなど全て失って。
砕け散ったこころに、闇だけがひろがる。







・・・さよ、テッドを失うこと、知ってて、シークの谷に入りました。
だから、ものすごく足が重かったなあ。
やはりゲームは攻略本も事前データも同人誌も(笑)読まずにはじめなくては。




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