「ね、ね、お兄ちゃん、もう一度やってみせて!」
宿屋のまだ小さい子供が僕を見上げていう。
頭には金輪。赤い服に黄色いバンダナ。自分に似せたそれはどうやら姉にねだって作ってもらったのだという。
「小猿同士でじゃれあってないでとっとと支度しなよ。」
「・・・こ・・・ひどいや、もう。」
陽も高くなったというのに、朝食の後からずっと離してくれなくて少し困っていたところ。
口の悪い助け舟に、それじゃね、と部屋を出ていく。
「今日はどこにいくんですかー?」
ミリーの元気な高い声。
「うん、このままグレッグミンスターにいこうかな、って・・骨とう品とか仕入れたくて。」
「はーい。ボナパルト、がんばろうねー。」
「そのために来たのか?峠越えにしちゃ頼りない面子だが・・・・」
怪訝そうな目のクライブ。
「いいんじゃないですか?修行、修行!」
久々の外に目を輝かすワカバと、剣をみがくハンナ。
(確かにぐちゃぐちゃだな・・・)
苦笑する。正直逃げるようにここに来て。近くですれ違った人を適当に誘ってきたのだ。
ただし、ナナミやアイリのように心配そうに気遣う人やビクトールやシェラのように見透かしてしまいそうな人を除いて。
「大きな戦闘がなければ大丈夫だよ。」
つかの間の休息だった。
もうここにいる意味はない。
夕べ出逢った少年が自分の手を取る事はないだろう。
優しい言葉で甘くどこまでも許すようで全てを拒絶する。
瞬間感じたなにかはおそらく同じ宿星を束ねるものの既視感。
ただそれだけ。
そう思わなければ辛すぎた。
ただ一度出会っただけなのにこれほどまでに胸が痛い。
振り回される運命の
焼け付くような胸の痛みを、
叫びだしそうな喉の渇きを
あのひとなら分かってくれる気がしたのに。
宿を出て村を出ようとすると道で遊んでいたコウに出会った、お別れしなきゃね。そう思って手を振ると駆け寄ってくる。
「ねえねえお兄ちゃんたち、あのひとと会いたいんでしょ。手伝ってあげようか。」
「え、あ、でも、もういいんだ。」
「ちょっとまってて!」
あ、と止めるまもなく走り出していってしまう。
「ぼくがさらわれたふりをするからー!そのすきに!」
ってそんなおっきな声で・・・。
仕方なく、僕は昨日会った少年に会いに行くことにする。
でも今更会ってどうするかは頭の中でうまくまとまらない。
村のはずれの池のほとりに釣り糸をたれる少年と、行く手を塞ぐ宿屋の娘。
聞いた話によるとどうもこの娘はあの人に好意を持っているみたい。
「帰って!」
ヒステリックな甲高い声の向こうで少年は聞こえているだろうにこちらなど見向きもしない。
分かってはいても胸がずきずきと痛い。
そんな拒絶の仕方をされなくてはならないほど僕の事が嫌いなのだろうか。
一緒に行けないのならただ一言そういえばすむのに。
それなのに心のどこかで諦められない自分が悔しい。
背を向けようとしたその時「きゃー!」悲鳴が響いた。
村はにわかに騒ぎになった。
「コウが・・・コウが・・・お願い、助けてください・・・」
娘が「英雄」にすがる。
大変だ、助けに行こう、そう思いつつも、
さっきまで戦いに担ぎ出すなといっていたのにそんなもんかな、と心のどこかで冷ややかに思う。
少年が動く。ゆっくりと僕の正面まで歩いて来て、立ち止まる。
少し高い位置からゆっくりと見おろされて、低く一言だけ発せられる声。
「・・・・行くんだろう?」
それに答えず、目で頷く。
(あなたが行かなくたって行きますとも!)
その言葉を口にする事はしなかったけれど、僕はこの人を戦闘に巻き込まない事を決意していた。
戦いたくない、という者の手など必要であるわけがない。
これは僕の戦いなのだから。
この話で本当に坊ちゃんと2主仲良くなるんでしょうか・・・書いてて不安になってきた。
もうすこし続きます。(さよ)
この2主、かなり真面目っつーか暗いからねえ。でもこの坊ちゃんは気に入った相手は苛めてみたくなるタイプのようなので、多分大丈夫。坊ちゃんがその気なら2主に選択肢はなさそうだしー。(あゆりん)
それもなんだかむかつきます・・・・(さよ)