「お願いします、わたし・・・わたし知ってるんです、あなたがあのときの英雄だってこと・・・」
すがる娘。村人の期待。


重たいね。結局どこへいっても。逃げる事もできない。



不意に右手によぎる影。紋章が意思に逆らって魂を喰らおうとする。




よせ・・・!




おもわず、右手を抑えて膝をつく。



この人たちを愛しいと思ってはいけない。守りたいと思ってはいけない。



潮時、かな。


苦笑する。どうやらひとところに長くいると紋章はその地に狙いを定めてしまう。



「おねがいします。コウを助けて・・・」
頷くと、入り口に向かった。昨日会った少年が目に入る。

「行くんだろう・・・」
そういって、肩を叩くと寄るな、というように肩をゆすって手を払った。憤慨しているようだ。
「行きますとも。」
下から睨むような視線。

昨日からかいすぎたかな。

感情が手にとるように顔に出る。今度の軍師はさぞかし苦労していることだろう、と笑みが漏れた。


村を出ると山道にはモンスターが現れる。戦闘のたびに一番に飛び込んで、僕に先陣を切られると眉根を寄せてひどく悔しそう。僕はそれを気付かない振りで笑いかける。目があうと、むっと口元を曲げてぷいっと向こうを向いた。

本当に拗ねてる。
「そんなにひどいことしたかなあ。」
あまりにも子供だ。見ているとからかいたくてしょうがなくなる。
ああ、こういうのを目が離せないって言うのかな。
そんなにたいした相手でもないのに無理するから息上がっちゃって。

かわいい。

「・・・いい加減にしなよね。」
後列のルックに杖で背中をぐりぐりとこづかれた。


コウを攫ったという山賊は、僕らの顔を見るとあっけなく戦意喪失した。
だが肝心のコウは化け物のまえに置き去りにしてきたという。

そこまでたどりつくとコウがぐったりと倒れていた。
エリが心配そうにかけよる。

「顔色が悪いわ。まるで毒でも・・・」
異様な音とともに巨大な化け物が現れた。緑に赤の紋様の入った巨大芋虫。

化け物には慣れてる、とっさに陣を組むと攻撃に移る。
体力はありそうだが、そうたいした相手でもなさそうだ。

しばらく戦うと芋虫の動きが止まり、背中が裂けた。倒した、と思ったのもつかの間、
中から薄気味の悪い色の蛾が孵り、襲い掛かる。

きらきらと光る燐粉を撒き散らす。猛毒だ。
空中からの攻撃になすすべもない。

「逃げましょう!ねえ!聞いてるの!」
後ろからエリが叫ぶ。確かに正しい判断だ。もし化け物と出くわす前ならば。
逃げるには逃げるなりの体力がいる。いま引けば全滅だ。

どちらにしてももう退路はない。せめてエリとコウだけでも・・・。

そう言おうとして。


二人の紋章が輝いた。まるで導かれるかのように。



彼が右手をかざす。
輝く盾の紋章から力が降り注ぐ。

そして僕はソウルイーターを発動させた。





いつも紋章を使うときのような、激しい痛みはまるで走らなかった。


これは。

このこは。



一瞬、時の外に、二人だけがいるような錯覚。




このこは。





目があった気がした。永遠に感じられた一瞬。



どう、と化け物が倒れる音で我に帰った。



「コウが・・・コウが・・・・」
「グレッグミンスターで診てもらえばいい。大丈夫だ。」

すがる娘にそういいながら、僕は視線を少年からはずす事が出来なかった。

少年もこちらを見ている。そうだ、はじめてだったのだろう。
紋章の力のぶつかりあい。流されるままに溢れゆく力。

僕は2度目だった。

ウィンディとの戦いのとき。闇の力同士の氾流の中で体験した憎悪と狂気。




だけど、今回は。

彼はソウルイーターを導いたのだ。



このこは。



僕の待ち望む、おそらくはたったひとり。






僕を永遠に滅ぼす事ができるだろう。










まだおわんない〜(泣)




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