本日は忍者アカデミーの入学式。
 新しい生活への期待と不安に満ちた空間は、毎年毎年代り映えするものでもないだろうが。
 しかし、今年に限っては明らかに違う意味合いのざわめきがこの場を支配していた。
 「今年いるんだってさ」
 「あの、うちはの継承者が?」
 「一族全滅して唯一生き残ったっていう?」
 「すげーマジかよ」
 ひそひそ声は途切れることなく続き、視線はやがて仏頂面した黒髪の子供へ注がれていった。





 「みんなサスケのこと何か言ってるってばよ。おまえってもしかしてすげー有名人?」
 こそこそと、ナルトは後ろの席に座るサスケに話しかける。
 サスケはじろりと一瞥をくれていいから前を向けと促すが、好奇心に満ちた青い瞳に見つめられるとしょうがなさそうに口を開いた。
 「あいつらが言ってるのはオレの家のことだろ。オレ自身じゃねえよ」
 「えー、でもすごいってば。みんなおまえと話したそうだしさあ。ちょっとはにっこり笑ってやればいいのに」
 「何でそんなサービスしてやる必要がある。大体オレと話したいなら、てめえみたいに図々しく話しかけてくればいいだろうが」
 「図々しいって何だよ! オレだって好きで話しかけたわけじゃないってば!」
 だってナルトには同じ年頃の友達なんていなくて。
 絶対友達たくさん作るんだ!と勢い込んでやってきた入学式。
 早速出席番号の近い相手に話しかけたら前の番号の奴には何故か無視されてしまった。
 気を取り直して、ちょっと声かけづらいかなーなんて思ってたスカシ面した後の番号の奴に話を振ってみたら、無愛想にぼそぼそとそれでも返事をしてくれて。
 嬉しくなっていろいろお喋りしていた。(と言っても喋るのはもっぱらナルトで、殆どの場合サスケは短く返事を寄越すだけだが)
 「先に声かけてきたのはてめえだろう」
 「うー・・・」
 言い返せずにうなり声を上げるナルトに、サスケは口元をつり上げてにやりと笑みを見せる。
 めちゃくちゃ根性悪そうとしか見えないそれが、実はサスケにとっては何年かぶりの笑みであり、普段の彼を知る者にとっては正に驚天動地の出来事だということを、ナルトが知る由もなく。
 ぷうっと頬を膨らませて前に向き直って、でもしばらくするとまた振り返ってはさっきのことなんか忘れたようにあれやこれやと話し始める。
 さっきから何度も繰り返された光景に、サスケがこっそりほくそ笑むのにも当然ナルトは気付かなかった。



 がらっと音を立てて教室のドアが開く。
 先生がやってきたのかと、新入生達は一斉に居ずまいを正す。
 しかし、そこにいたのは教師ではなく、数人の上級生。
 その中心にいる少年の印象的な白い瞳に、教室は再びざわめく。
 「あれって白眼じゃねえ?」
 「したらもしかして2年生でトップって評判の日向先輩?!」
 ざわめきを気に留める様子もなく、上級生達はつかつかと教室内に入って来た。
 「うわわっ、こっち来るってばよ、サスケ」
 「・・・・」
 「うちはサスケだな。オレは日向ネジ。おまえの入学を歓迎する」
 うざそうに眉を顰めるサスケに気付いているのかいないのか、負けず劣らず無愛想な表情のネジは、尊大な口調で言葉を続ける。
 「忍者の世界にも血統は重要だ。特に日向家やうちは家のように血継限界を持つ家系はな。おまえ程の者なら当然分かってるだろうが」
 「うわー、何かすげーヤな奴だってば」
 ごくごく小さな呟きだったが、アカデミーの優等生は聞き逃さなかったようで。
 ネジは初めてその存在に気付いたかのようにナルトを見下ろし、蔑んだような笑みを浮かべた。
 「その黄色い頭、うずまきナルトだな。親なしのみそっかすか。・・・うちはサスケ、友達は選んだ方がいいぞ」



 バン!と激しい音を立てて机が打鳴らされた。
 かたずを飲んで見守る新入生達の視線の先で、サスケがゆっくり立ち上がる。
 サスケの顔からはあらゆる表情が拭い去られ、気圧されたように後ずさるネジをぞくりとする程冷たい視線が射た。
 「日向家ってのは分家ふぜいが云々できる程安いのかよ。・・・まあオレにはどうでもいいことだけどな」
 「何だとっ!」
 血相を変えるネジとその取り巻きを尻目に、サスケはナルトの腕を掴んで立たせるとその首にしっかりと自分の腕を回す。
 「あいにくだが、付き合う奴くらい自分で決める」
 堂々とした宣言に教室中が静まり返る。
 ネジでさえあんぐり口を開けて固まったまま凍り付きそうな静寂を、きゃんきゃん声が打ち破った。
 「ちょ、ちょっと待てってば! オレ、オレの意思は? オレだって自分で選びたいってばよ〜」
 サスケによってしっかり首にロックをかけられ、身動きがままならない状態ながら必死にナルトが主張する。
 だがしかし。
 「ドベに選択権はない」
 あっさりと断言され、なおかつ首に回された腕にこれでもかとばかり力を込められてしまった。
 言い返すよりも先に息が詰まってしまい、必死に傍らの机を叩いてアピールするが、力が緩む気配はなく。
 (まじ死ぬってば・・・)
 「う、うちは君、うずまき君がオチかけてるよ・・・」
 「・・・ちっ」
 「・・・た、たすかったあ」
 見兼ねたようにクラスメートが声をかけてくれ、ようやく解放されたナルトが必死に呼吸を整えていると、再び教室のドアが開いて担任教師が入ってきた。
 「こら、何騒いでる。日向もこんな所で何してるんだ。早く自分の教室へ戻れ」
 教師が声を張り上げると、ネジ達は悔しそうながらも大人しく教室を出て行く。
 ようやく呼吸が落ち着いたナルトも慌てて腰を下ろしたが、すぐに後ろを振り返って既にしれっと席に着いているサスケを睨み付けた。
 「いくらあの上級生が気に入らなかったからって、オレをダシにすることないってばよっ」
 教師を憚って小さな声で抗議すると、サスケの眉が不快そうに寄った。
 「んなことしてねえよ。オレは基本的に嘘や冗談は嫌いだ」
 「本気ならなお悪いってば!」
 むくれるナルトにサスケは呆れたようにため息を吐いて、ナルトの前髪を軽く引っ張って引き寄せる。
 まっくろな瞳がいきなり間近くなって、ナルトは反射的に身を引こうとしたけれど。
 サスケの表情がふっと柔らかくなったのに驚いて、目を離せなくなってしまった。
 「往生際悪いぞ、ウスラトンカチ。最初にナンパしたのはそっちだろうが」
 「ナ、ナン・・・」
 「こら、うずまき! うちは! いい加減お喋りをやめんか!」
 怒鳴り声に慌ててナルトは前を向いて、教師の説明に耳を傾ける。
 けれど神経は自然と背後に集中してしまう。
 背後の気配は何だかやたら楽しそうで、含み笑いなんかも微かに聞こえてきて。
 (誰がナンバしたってばよ!)
 これはもう絶対にからかって楽しんでるに違いない。
 だけど。
 『付き合う奴は自分で決める』
 思い出すとどきどき鼓動が速くなる。
 本気でもそうじゃなくても、あれってやっぱりかばってくれたんだろうか。
 (だとしたら、やっぱり嬉しいかも)
 もしサスケが台詞の半分くらいでも本気で友達になってくれるつもりなら。
 これからのアカデミー生活、期待できるかもしれない。
 多分絶対確実に、性格悪そうな奴だけど。





 うずまきナルトがうちはサスケに声をかけたのが、果たしてその後の彼にとって吉であったか凶であったかは当人の判断に任せるとして。
 「あいつが声かけなきゃ、オレから行っただけの話だ」
 結局の所、出会った時点でナルトの運命は決まっていたらしい。
 






 というわけで、ハリポタパロとは名ばかりで、状況と台詞の一部を借りてきただけだったりします。
 普通にサスナルSSにしといてもよかったですが、ネジ兄さんの扱いがあんまりひどいし、サスケとナルトがアカデミー入学同時ってのはどう考えても無理があるよなーということで。
 それにしても今回のサスケ、今まで書いた中でおそらく年齢設定一番低い筈なのに、一番甲斐性持ちのような気がします(笑)。奴が狙ってるのは絶対に友達じゃありません(大笑)。




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