容れもの 序 4    サクラ






気のせいかもしれないけど。
先生からナルトの匂いがした。

あいかわらず、先生は遅刻して。
サスケ君は無口で。
私たちは淡々と一日の仕事をこなす。
じゃまばっかり、とおもってたナルトがいないことが、こんなにも一日を色のないものにさせる。

「ばっかねえあんた。」
「いーい。よくみてなさい。」
「ちょっと、あんたけがしてんじゃないの。」
そんな心配もお説教もなんにもいらない。
「さくらちゃんてば。さくらちゃんてば。」
繰り返し。うるさいと思ってもいた。
うざいわね、ちょっとだまってなさいよ。そう思ってたのに。


あんた、どこいっちゃった、ってのよ!

みんなも、きっとそう。
黙って、表情も変えず、お手本のようにこなす任務。

「先生。」
遊び相手がいなくて手持ち無沙汰なカカシ先生を見上げる。
「ナルトの匂いがする。」
「気のせいでしょ。サクラ、ナルトのことばっかり考えてると怪我するよ。」
表情は変わらず。だけど一瞬瞳の奥にみえた答え。それで十分。
あとは、この男からは訊けない。さあて、どこから攻めようか。


それもすでに、出ている答え。
任務が終わって、サスケ君はいつものようにどこかにいってしまう。
カカシ先生は消えて。
さあ、わたしはナルトのうちへ。

だってね、アカデミーにはいけない。今日は。
きっとカカシ先生が張っている。
今日ははずれてもかまわない、そう思いながら。

あ、一発で、ビンゴ?

そこにいたのは、なつかしのイルカ先生。
私たちが入学するときに先生になって、卒業と同時に火影さまの側近に戻った人。
カカシ先生も、あのレベルは普通下忍の世話なんかしない。
私たちがはじめての生徒だといった。だけど多分最初で最後。
仕組まれたなにか。子供だから分からない?まさか。
だって、私は最初から気づいてたわ。


「先生。」
「サクラ?どうした?」
「あたし。ナルトが心配で・・。気がついたら、ここに。」
かぼそく、はかなげな声で。そっと、俯いて目を手でおおってみたり。

「・・・イルカ先生。」涙をためた目で訴えるように。

「あ、ああ。」
「私、ナルトの力になりたいんです。」ちょっと清純さも。
「サクラ。しかし。」
「先生!お願い!」ええい、涙流しちゃえ!
「・・・危険すぎる・・・」
やっぱり知ってんのね。しかも里にいて手が出せる距離にいる、と。
イルカ先生の足で半日以内というと、だいたいのあたりはつく。
さて、どういこうか。先生なら熱血かな?
「実戦に出せとは言いません。足手まといなのは分かってるから。
 私、きっと、弱点を見つけますから、頭脳として。」
「・・・・」
ええい、まだ駄目か?
「先生、ナルトがなんだとしても、例えば醜い化け物でも。」
波の国で感じた、強烈で醜悪なチャクラ。
「ナルトはうずまきナルトとして」
だれも認めてくれなくても、強くあろうと頑張っていたことを知っている。
「生きる権利はあるんでしょう!」そこまでいって。

「勝たせて見せます。」わたしの、決意。
わたしが、あんたを、死なせてなんかやらない。
あきらめたようなため息をもらし、ついてきなさい、と先生は言った。


ナルト、きいてる?
わたし、あんたなんか大嫌い。
そんな風にあきらめてないでよ!
だって、私たちがいるじゃない。