どうしてひとりで来た?
どんなこと考えてた?

色んなことを聞きたかった。
だけど、いざ目の前で泣かれると、もうそんなことはどうでも良くて。
頭をなぜてやることしか出来ない自分がどうしようもなく悔しくて。
「・・・ごめんな・・」
悪いことをしたわけでもないのにいたたまれなくて呟く。
返事がない。いぶかしんで覗き込むと泣きつかれたのかすうすうと寝息を立てている。
(・・・馬鹿野郎が・・)
服にしがみついていたナルトの手をそっとはずすと自分の膝が枕になるように寝かせなおす。
(俺に・・・何が出来る?)

ナルトがここに連れられてきたこと。
俺たちがここに来たこと。
それはどちらも火影の計画の範囲内であるはずだ。
(火影は何を考えてる・・・?)
3代目は実戦の能力ではそう抜きん出た存在ではなかったという。
それでいて超人的な能力を持つ5大老の中でも最も恐れられる存在であることも
4代目の死後老いてなお復帰したことからも只者でないことは明白で。
(俺たちはせいぜい手の中の駒ってことかよ・・・)

「キャー!!」
耳をつんざく様な悲鳴に顔を上げると目の前に血だらけの顔の女。
「・・・か・・」
(オカアサン!)
「に・・げて・・おまえ・・だ・・け・・・で」
どう、と倒れて。
「母さん!!!お母さん!!」
後ろから嘲るような笑い。
「脆いな、『うちは』もこの程度か・・・」
「・・・貴様・・!!」
飛び掛ろうとして、それより早く自分の脇からクナイが飛ぶ。
「・・・まぼろし、だってば・・・」
いつ起きたのか、みたこともないほど厳しい目で薄れゆく幻を射据えながら、ナルトがいう。
我に帰り振り向くと女の姿はどこにもなく。
悪夢のあとの言いようのない不快感にサスケは顔を手で覆う。
「悪い・・・」
「・・・ん・・・」
分かっているはずなのに。
「けっこー、堪えるもんな。
 おれもさ、最初のうちイルカセンセに首しめられるし、カカシ先生にはしんぞーぶちぬかれかけるし、
 サスケにはぎゅーってされたとおもったらクナイで刺されてさ。慣れるまで大変だったんだってば。」
なぐさめるつもりでまくし立てるナルトの台詞に余計気分が悪くなって。
「ちょっと・・わりい・・・」
ふらりと立ち上がると歩き出す。
「サスケ??外出ちゃ駄目だってばよ。」
「・・・すぐ戻る。」
心配する不安げな視線を背中に感じながらサスケは歩く。
(情けねえ・・・)
トラウマはそう簡単に消えるものではない。
どんなに強くなったつもりでも。忘れていたつもりでも。憎しみで覆い隠しても。
いつもいつも、自分はあの場所で母を呼び続ける。
もろい自分を認めたくなくて。ナルトに見られたくなくて。

(あの建物の影で少し気持ちを落ち着けてから、戻るか。)

壁に背中をもたせかけてふう、と溜息をつく。
「・・・サスケ、戻ろう。」
見るとナルト。
「ひとりで出ちゃ、駄目だってばよ・・・」
「・・・ああ」
くるりと踵を返して先に歩き出すナルトの後ろをついていくと、ぴたりと足を止める。
「やっぱさ、・・・サスケ、もうここ来ちゃ駄目だってばよ・・」
「え」
「・・・大事なものいっぱいある奴はいっぱい幻見るんだって。」
「ナルト・・」
「俺は、ずっと生まれたときから独りだったからヘーキだけど・・・サスケ辛そうだってば・・・」
「・・・」
「もうきちゃ、駄目だってば・・・」
サスケはぎゅう、と色がなくなるほど強く唇をかむ。
「確かにな・・・」
すばやく印を結ぶと火を放つ。きゃん、という鳴き声のような声がしてナルトは青白い炎に包まれる。
「・・・オマエデハ、スクエナイヨ、ウチハサスケ。オマエデモ、オマエノナカマデモ、ホカゲデモ。」
炎の中、にいと歪んだ笑い。
「ホカゲハワタシニ『コレ』ヲクレルトヤクソクシタ。」
ナルトの姿のまま青白い光が小さく薄れていく。
「ワタシノフッカツヲマツガイイ!!」
「くれてやるかよ・・・」
呟くと、サスケはナルトの元へ戻っていった。


戻ると明らかにホッとした顔でナルトが迎える。
「サスケ、・・・もう来ないほうがいいってばよ・・」
「バーカ、下んねえこと言うんじゃねえ。」
幻と同じことを言うから思わず苦笑して。相当ひどい状態だったんだな、と自嘲する。
心配そうに見上げてくる瞳が愛しくてぎゅう、と抱き寄せる。
「・・・・頼むから。置いていくな。」
「ん・・」
抱き返してくる温もりにどうしようもなく切なくなって。
サスケは腕に力をこめた。



「あー、時間ですよー」
とぼけた声に、はっと我に帰ると横にカカシとサクラ。
思わず、ばっと二人距離をとる。
「わ、わ、さ、サクラちゃん、え、えとそのあの」
「きゃーvいやーv二人とも不潔よー、何してたわけーvv」
「ふふ不潔って・・・おれなにも」
「まだしてねえよ!」
大慌てのナルトと明らかにむすっとしたサスケ。
「あら、なあんだ。」
残念そうにサクラが言う。
「ほんとに時間だから。・・・ナルト、悪いね。また来るから。」
「うん、ヘーキ!みんな、あんがと。」
この中に独り置いていくことがひどく残酷に思われたがどうすることもできず。
ナルトの側にいれるよう。強くならなくては。サスケはそう切に願う。

「・・・ナルトは大丈夫だよ」
帰り道、ぽんと肩に手を乗せ、カカシがサスケに言う。
どの状態をもってして大丈夫というのだろう。
「九尾にはナルトは殺せない。・・・・『容れもの』がやつは欲しいんだ。」
ぎょっとして振り向くが闇の中上忍の表情は読めず。
辿る道はどこまでも暗く、そして冷たく。永遠に光など見えぬように思われた。



今週ちょっと仕事に隙間があったので急いで更新。来月はなかなか書けなさそうなので。
原作。火影のじっちゃん、5大影の頂点ならもっと強いと思ってたのに・・・・弱え。(泣)
この話ではじっちゃん強いです、というわけで、やっぱり原作は無視した話になってしまうのね。ごめんなさい。

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