「いのちゃん!」
「サクラ!」
人気のない山道に分け入ると、待っていた人物にサクラはぎゅうっと抱きつく。

「会いたかった、会いたかったよ・・・いのちゃん」
普段は見ることの出来ないもう一人の人格が顔を覗かせる。
外面を気にしない、自分に正直なもうひとり。
過去を知っていて、そして助けてくれたいのの前でしか表面に出てこない少女の顔。
まるで小さい子のようにぎゅうぎゅうに首にしがみつくと、久しぶりにいのの香りがする。
「ばかね、あんたちょっと軽くなったみたい・・・・ちゃんと食べてるの?」
優しく髪をなぜる手は、これも普段きついと称されるいののものとも思えず。
「・・・ちゃんと監視はまいてきたの?」
「うん、なんとか。いのちゃんは?」
「ん、こっちは大丈夫よ。なに、あんたの顔色?隈作って。ただでさえよくない顔がますます不細工じゃない!無理しすぎなんでしょ!」
「ううん、ヘーキ。・・・・いのちゃんに会えたから。」
同じくらいの身長なのにまだ未発達のサクラより女らしい体つきのいのが体重を預けてくる。
しっかりとそれを受け止めてその肩に顔をうずめた。


(で、首尾はどうなの?九尾の事はなんか分かったわけ?サクラ)
(ある程度はね、でも犠牲を出さずに収めるのはキツイかもしれない。そっちは?潜伏して危険じゃないの?)
(まあね、やっぱり長老会が裏で手を引いてる。ナルトを捜してるわ。
 擁護派は少数だし、火影様に対してのクーデターの計画も持ち上がってる。)
(どちらかが手薄になれば向こうのほうが有利ってワケね。
 おそらくクーデターは陽動。あくまでも狙いは九尾だわ。)
(他の里は今回加担していない。シカマルともその件では一致したわ。アジトも分かった。あくまで尻尾きりだけどね。)
(当座はそれでいいわ。時間が稼げれば後はどうとでもなる。)

お互いおそらく監視のつく身。サクラは自分の精神をのっとらせてもうひとりの自分でいのと会話していた。
いのの身体ががっくりとなったように見えないように上手く身体をずらせて、まるで恋人の幸せな一瞬を演じるように。

「いのちゃん・・・。」
甘い声。

(だー!あんた気色悪いからよしてよね!)
(なによー、仕方ないじゃない。それに私の事、嫌い?)
(なにバカいってんのよ!あるわけないじゃない、そんなこと!!あーもーデコリンのくせに!)
(なんですってえ!デコリンじゃないわよ!いのブー!)

「じゃね、サクラ。」
そういうといのは預けていた身体をしゃんとのばし、サクラのおでこを思いっきり指ではじいた。
「なによう!・・・・・・っ」
ぐらりとサクラの身体が傾ぐ。目に映る毒々しい赤い爪。

「いの・・・?」
「悪く思わないで欲しいんだけどさー。あたしたちにもいろいろと事情があって・・・・」
「・・・・毒・・・」
「家族とか盾にとられちゃったりしてんのね。チョウジもあっちに置いてきちゃったし・・・そういうわけで悪いんだけど」

「ま、独りで来たのが仇になったってワケだな。」
「・・・・シカマル!」
「俺たちが先に来てるってことは、お前に勝ち目なんてないってことだ。」

サクラはきつく目をつぶる。うかつだった。
いのやシカマルに会って、協力を願い出たのは自分だった。
ひとりで背負うのが不可能な事も分かっていたから。
でもその選択が相手を危険に晒すことをどこかで軽く考えていた。
自分への過剰なまでの監視が必要なほど、その勢力は大きいのだ。
ひとりでゆくべき道だったのかもしれない。

「どーすんの、これから。」
「とりあえず親方様のところに連れてこいってよ。こいつの情報は役に立つ。・・・・っていってたからなあ、あー、だりー・・・」
いのがばちんと指を鳴らすとざっと、10体ほどの黒い影が藪から現れる。
無言の黒装束の群れはまるで化け物のように薄気味の悪いものだ。
「やな感じだぜ・・・・。」
吐き捨てるようにシカマルが呟く。

サクラを荷物のように担ぐと2人の忍が姿を消す。

残りがぐるりと無言でシカマルといのを囲む。
「分かってたけどよ。もう俺たちにゃ用なし、ってわけか。どうせやられんなら正義の味方を貫いてりゃよかったかな・・」
「仕方ないわ、捨てられないものがあったんだもの。」
いのがふふっと笑う。
「そうだな。」


















暗がりの中ひどい頭痛とともにサクラは目を覚ました。
(ここは、あたしは、・・・)
この暗さと肌に触れる冷たさはどうやら土蔵か洞穴のよう。
風がないということは閉じ込められたのだ。
後手に縛られてはいるが全く動けないというほどきつくはない。足は縛られていないし猿轡もかまされていない。チョウジが捕らえられているといっていたがそれとはどうも別の場所のよう。
乱暴に扱われた様子もないようだ。
それはどこかに監視がいるかそれとも逃げられないような場所なのか。
たかが小娘とあなどっているのなら、チャンスはある。

敵に今のところ殺意がないとして欲しいのは情報だけか、味方に引き込むつもりなのか。
毒は切れているようだ。痺れる程度の軽いものをつかったのだろう。毒の消え方からおそらくは数時間経っている。
逃げ道はあまりなさそう。だけどどうやらお偉いさんが会ってくれるってことね。

ならば活路はどこにある?

サクラは考える。


カカシ先生たちが来てくれるかもしれない。
でも今までほとんど分かってて手を出せなかった大物だわよ。
今度だってほんとは来てくれるか分からない。
肝心なときにタコなんだから!

来なければ、自分で逃げ出すか、それとも・・・

そう、・・・話次第では寝返るかもね。



カツン、と杖をつく音がして、それに従うように数人が入ってきた。



「ようこそ、手荒な真似をしてすまんかった。春野サクラ。」
しわがれた声が頭上からおだやかに告げる。


「あなたは・・・」

そこにいたのはかつて初代火影のブレーンであった女。
コハルが立っていた。
御大自らのお出ましとは、意外だった。


「・・・・・・あなたが、なぜ・・・・」







「里のためじゃよ。わざわざ驚いて見せなくとも、予想はしていたであろう?」

「・・・・いえ、想像もしませんでした。」
いや、実のところ予想はある程度ついていた。
里にいて火影が手の下せない者となると、おのずと限られてくる。
そして他の里に協力を申し出ていないという事は里に戦乱を持ち込む気はないということ。
だが、今の時点でもコハルは十分に政治的な力を持っている。
なぜ、という気はした。

「アレは外へ出すべきものじゃあない。」
「・・・ナルトの事?でも九尾を倒してしまえば、いいことでしょう・」
「倒せると思うか?」
「・・・倒すわ。もうすぐ、封印された8体を倒して、ナルトは帰ってくるわ。」

コハルはまじまじとサクラを見、深く溜息をつく。
「今、おぬしらは九尾を倒しておるつもりだったか?春野サクラ。」
「・・・どういう意味よ。」
「あれが本当にはどこにいるかしっておるか?」
「・・・12年前に滅びた、旧市街・・・」
「里は九尾が暴れたあと同じ場所に復興した。そんな場所はどこにもないぞ。」
「・・・・」
「おそらくそれは火影の水晶に映し出した架空の場所。いわばナルトの精神世界を投影した場所じゃ。」
「・・・・それは・・九尾がナルトの中にいるから。」
「そうじゃ。九尾は年月を経てナルトと深く結びついておる。
 今その鎖をはずしにかかっている、そこまでは理解できるな?」
「ええ・・・でもそれは・・・そうしないと九尾を倒せないからよ。」
「倒せるのか?九尾と火影が繋がっているとすればどうする?」
真実ではないと否定できるものなら。
謎が符合してゆく。
「・・・九尾にナルトの体を渡すってやつ・・・?それは・・・」
サスケから聞いた、九尾の放ったという言葉。サクラは戸惑う。
「火影は九尾が体を支配したあとに刺客を放つつもりだろうが。勝算のない賭けじゃ。」



「おまえなら九尾の復活を阻止できる。そう思ったから呼んだのじゃ、サクラ。」

「わたしが?」
「あの中にいるうちにナルトを殺せばよい。そうすれば九尾は永遠に水晶玉に閉じ込められる。」



(どうして、ここまで情報が筒抜けなのかしら。)
それは暗に内通者がいることを指し示す。
忍びの里が笑わせる。機密も何もあったものじゃあない。
「じゃあ、どうして今まで手を出さなかったのかしら。」
隙なんてナルトが大きくなるまでいくらでもあったはず。
「下手に手出しすれば封印が解けるかもしれんでな。被害を出したくなかったのじゃ。
 だがもう猶予はない。」
「猶予がない?」

「なぜ、火影が12年も経った今になってナルトを閉じ込めたと思う。」
「封印が弱まっているからでしょう?」




「もう、容れものが持たぬ。」
サクラの恐れていた事実を、ゆっくりとコハルは宣告した。





コハルって誰?といわれた方、ちゃんと臨の書にいますよ〜。ジライヤさんに火影就任要請もしてたよ〜。というわけでオリジナルキャラじゃありません。(あゆりんが誰って聞くから・・)。
ついでにいうとこの日はサクラちゃんオフでした。氷の尾を倒した翌日ですね。ホントは閑話Bサイドで簡単に終わる話だったのになあ。サクラちゃんって予定以外の行動になっちゃうから・・。(さよ)


サブタイトル「暗躍する女達」ですか?(笑) 相変わらずサクラちゃんつえーわ。
てかコハルさんって最初誰だか分かりませんでした。まさかこんな権謀術数なイカスばーさんになってるとわ。侮れん(あゆりん)



戻る