「どうしたんだ、アンタ」
「んー、別に」
サスケからの問いに上忍は素気無く答える。
基礎体術から始まるいつもの訓練だがなんというか。
「まるで本気じゃねえな。」
「そーでもないよ」
サスケの蹴りから続く連続技をきれいに避けながらも上の空といった感じで。
「その術は相手が動けなくなってから出すべきだね。結構なチャクラを消費するし。」
きれいに急所に攻撃が決まった、そう思った瞬間、目標は丸太に変わる。変わり身の術。
そして少年が着地しようとした瞬間、
「大技にはどうしても隙が生じる」
背後から投げ込まれる無数の手裏剣。
一つが着地したサスケの足首を縫い、動きの止まった少年の身体に容赦なく手裏剣が刺さる。
血を吐き膝をつくサスケを見下ろしてカカシは、眉ひとつ動かす事もなく呟く。
「らしくないね・ホント」
「・・・全くだぜ。」
棒立ちになったカカシの背中に鋭く固い切っ先が当てられている。サスケのクナイ。
「おまえの勝ち、ってやつだね。」
目の前の手裏剣のささった丸太を見てやれやれと肩をすくめて両手を広げてみせる上忍に、
少年は不満そうに武器を収めた。
「・・・納得いかねえな。」
サスケは自分でもここしばらくでかなり腕を上げたとは思う。
里でも指折りの上忍につきっきりで指導を受けているのだ。
禁術も相当の数を立て続けに出せるほどチャクラも増えている。
何本かに一本は勝てるようになってきたとはいえ、いくらなんでも今日のカカシはらしくなかった。
「俺もお前専属になっちゃったからもっと気合入れてしごかないといけないんだけどなあ。」
「なんだそりゃ。」
「サクラが任を解かれた。」
「あ?どういうことだ」
「分からないんだよ。俺も今日はじめて知ったんだから。」
その日はよい天気の休日だった。
前日の封印の戦いでチャクラを消耗したカカシは、カーテンも開けずにベッドに転がっていた。
意識はある。ぼんやりと目だけを部屋に泳がせた。
自由にならない身体。
(年取るってヤダね、無理がきかなくなって・・・)
もともと他人の身体であった左目、視神経から脳にかけての負担はかなりのもので、無尽蔵にチャクラを喰らう。
ナルトにもサスケにもつかの間の休息を与えてきた。
これから先なにが起こったとしても後悔しなくていい様に。
もう、これから先はいつ休息が訪れるかは分からない。
明日には何もないかもしれない。
特に口下手な少年が、自分の過去と重なる。
毎日をまるで亡骸のように過ごす時間の苦痛。
死者へ向けての懺悔。
今更感傷なんてものに酔う気はさらさらないが、きっと残されれば自分を苛み続ける。
・・・・・今の自分のように。
サクラにも今日は休みを与えてきた。
水晶であの二人を見せるのはあんまり気の毒だったから。
たまには埃っぽい本から目を外して、たとえ監視付きでも家族のもとに帰ってくるべきだと。
まさか、それが仇になるとは思わなかった。
「どういうことです?」
「サスケの訓練に専念するよう、サクラについて貴方の任は解かれた。と伝えよとのことです。」
翌日の昼前に火影屋敷につくと、淡々とイルカが事務的に告げる。
「だれか他の奴がまわるのかな?」
「さあ、私は伝言を受けただけですから。サスケの修行、急いでほしいとのことです。」
食えない男だ。にこやかな笑みだが目は笑っていない。
ナルトといる時、いや、アカデミーにいる時と同一人物とも思えないほど。
どちらが演技かといわれればどちらも本当であるのかもしれないけれど。
「えっと、でも俺サクラと約束した事があって、ちょっと会いたいんだけど。」
「サクラは行方不明です。幾人か追っ手がやられています。」
「え・・・ちょっと・・」
「火影様はしばらく様子を見るようにとのことですので、従ってください。では。」
ドアが閉じられようとする。
「あんたはそれでなんとも思わないってワケ?」
「そういう訳ではありません。あの子だって大切な生徒です。気にならないわけないでしょう。」
苛立ちを込めた目を横に逸らす、ふと見せる人情に厚い教師の顔。
「ですが、あの子は私の手に余ります。
そして今は好きにさせろ、と、火影様が・・・いうのですから。」
「・・・」
「わたしは火影に仕える者です。」
絶対的に忠実な部下の顔。
これこそが戦闘に置いては中忍レベルでありながら側近のひとりである理由。
ドアが拒絶するように重い音を立てて閉まる。
「好きにさせろって・・・」
「後任にいのとシカマルが入っているそうだ。アスマに聞いた。」
サスケはここしばらく自分が強くなる事だけを考えてきた。
外で何が起きているのかも知らないままに。
サスケの足が修行場の外へと向く。
「どこへいく?サスケ」
「助けにいく」
「誰を?」
「なにいってる。心配じゃないのか?」
「修行は続けるよ。・・・『好きにさせろ』といっていた。つまり、サクラは自由意志でそこにいる。」
「なんだと?」
「俺たちは当てにもしてもらえなかったらしいな。」
ひとりで決めてひとりで行く。この3人は協力こそすれ、最終的にいつもひとりなのだ。
サクラはきっと助けを求めたかったのだろう。
今だって誰かが来てくれるのを待っているかもしれない。
それでも必死の思いで選んだ道を踏みにじるわけにはいかない。
「・・・・・・。」
無言のまま少年が睨む。
どこか素直になれない意地っぱりなところがサスケとサクラはよく似ている。
惹かれる事はなかったにせよ、互いのことはよく分かっているように見える。
「信じてやれるだろう?」
その思いが報われるならば、幸せな結末を迎える事が出来たなら、彼女は泣く事が出来るだろうか。
けれどその時側にいることは火影に仕える自分では、かなわないことだろう。
イルカは『今は』といった。後で帰ってくる、彼女にさせることがあるのだという事だ。
なんだかんだいいながらイルカはこちらに情報を流してくれたのだ。
「私情は捨てろ。これは任務だ。そしてお前には別の役割がある。」
自分に言い聞かせるようにカカシはサスケに諭す。
「お前がいなければ、ナルトは死んでしまう。」
サスケの目が大きく開かれる。
「お前がいなければ、ナルトは死んでしまえる。と言った方が正しいかな。」
「失ったものは二度と戻らないよ。」
「サクラは・・・無事なんだな。」
「ああ。おそらくね。」
「分かった・・・」
サスケは次の基礎訓練に移る準備を始める。
少年の肩にはいくつの命を背負うのだろうか。
数年待てるものならば、きっとどんなことがあっても大切なものを守り通す力を付けられたろうに。
(自分と重なるから痛いんだよねえ。)
物言わぬ少年の後姿に、カカシは溜息をついた。
最初カカシセンセがかっこよく助けに行くつもりだったんです。
だけど「カカシ、干される」って、書きたくなって。いや、うらぶれてしまいました。カカシ先生ごめんなさい。
それにしても私の中でイルカ先生只者でない??
だってどうして原作でただの中忍が火影様の横にいっつもいるんですかー!ってつっこみが。
にしても書いてる私が予測と違うほうに書いてどうする。続きはどうしましょうね。(苦笑)
やっぱり一気に書き上げないと駄目なタイプみたい。
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