今も君が忘れられない
・・・苦しい
きみがかなしい
せんせい、あのね。
サスケがね、オレのこと好きなんだって。
え!せんせい知ってたの?!
何で教えてくれなかったんだってば!
そりゃ、ひとから聞いたって意味ないけどさあ。
なんか、ちょっと悔しいってばよ!
返事?
するわけねーじゃん。
そんなことしたって、何にもいいことないってばよ。
・・・サスケにはさ。
サスケ、オレのこと、ずーっと好きだったんだって。
いちばん好きなんだって。
あのサスケが!
顔なんか赤くして、口ごもったりしながら、そんなこと言ったんだってば!
すっげー笑えるってばよ?
でもさ、めちゃくちゃ・・・うれしかったあ。
ほんとに、シンデモイイほどうれしかった。
だから、もういいんだ。
ほんとは、ちょっとだけ心配。
サスケってさ、いっつもすげーぶっちょづらで、何にも面白くありませんって顔しててさ。
あれって、ポーズじゃなくて、ほんとに何にも興味ないんだってば。
・・・そ!あいつ、シカイ狭いの!
野望とかそーいうので頭の中いっぱいで、他のこと気にするよゆーなんか全然ないの。
いっつも人のことドベとかウスラトンカチとか言うくせに、自分の方がよーりょー小さいってばよ!
でもさ、それってつまんねーじゃん?
目的に向かってまっしぐらって、いいことっぽく聞こえるけど、それだけじゃさびしくない?
だからオレ、修行とか任務のスキをみて、あちこちあいつ引っ張り回してたんだってば。
春だったら桜のきれーな山でお花見、夏には冷たい川辺で水遊び、秋は見晴しのいい丘で風に吹かれて、冬には雪降る森を歩き回って。
サスケ、めんどそーにしてたけど、それでも黙ってついてきてた。
オレがはしゃいでると、しょうがないなって瞳で見て、少しだけ笑った。
それが嬉しくて、ますますはしゃいで、勢い余って転んじゃったりして、バカにされたけど。
サスケにね、教えたかったんだ。
ここはとってもキレイな所なんだよって。
時々風が冷たくて、オレ達みたいのには身を切られるほど痛いこともあるけど、それでもこの里は、世界は、とてもキレイ。
だから、何にもスキじゃないって言ったあいつに。
嫌いなものばっかりって言ったあいつに。
世界がオレ達をスキじゃなくても、オレ達は世界をスキになっていいんだって、ずっと言いたかった。
大丈夫だよね。
サスケに教えてくれる人、どこかにいるよね。
くやしいけどあいつ、顔はいいし、腕も立つし、性格は曲がってるけど、どーしよーもないってほどじゃないし。
あいつのことだけ考えてくれる人が絶対いるってば。
サスケも、オレなんか好きになれたんだから、きっともっと誰かを、みんなを好きになれる。
だから、平気。
オレがいなくても。
サスケはね、いつもオレが欲しいものをくれたんだ。
アカデミーで。
オレが話しかけたら、うざそうに、でもちゃんと返事をしてくれた。
みんなたいてい、オレが何か言ったりすると、無視するかにやにや笑うばっかで。
でもサスケは、すげーぶっきらぼうでキツイ言い方ばっかしてたけど、まっすぐオレを見て、オレの話を聞いてくれた。
めちゃくちゃ態度悪いから、こっちもつい怒鳴っちゃったりしたんだけど。
下忍になってから。
仲間だって言ってくれた。
オレが何か失敗すると、すげー怒るし、けちょんけちょんにけなすけど、でも絶対見捨てたりなんかしないんだ。
ライバルだぞってオレが言うと、それならせめて組み手で5回に1回は取れるようにしろなんてスカした顔して、ライバルならもっと腕を磨けって笑った。
サスケは、いっぺんもオレを無視しなかった。
いない人間のように扱わなかった。
それだけでよかったのに。
ほんとに、それだけで充分だったのに。
波の国で。
サスケはオレに命をくれた。
そんなのもらっても、困るんだけど。
おなかがぐるぐるするくらい、嫌なんだけど。
でもさ、ずーっとずーっとオレ、里のみんなからいなくなってしまえって言われ続けてて。
おなかの中にいるモノが分かって、言われてもしょうがないかなって思った。
あ、センセイは違うってばよ。
センセイ達みたいに、そんなことない、ここにいていい、生きていてもいいって言ってくれる人もちゃんといるってば。
でも。
死ぬなって。
生きろって。
オレに生きててほしいって。
そんな風に願ってくれたのは、サスケだけ。
サスケだけが、いつもオレの一番欲しいものをくれる。
だから、オレ決めたんだってば。
オレもサスケに、サスケの欲しいものあげる。
昔から言ってた、サスケの一番の夢。
それを叶えてあげるために、何でもする。
そしたらね。
サスケ、オレのこと好きって言うから。
オレのできること、ひとつしかなかったんだってば。
・・・無理なんかしてないってば。
オレ、ほっとしてるんだ。
だって、もうサスケを見なくてすむ。
いつかオレから離れてくサスケを見なくてすむ。
オレを好きって言ってくれたサスケだけ、覚えてることができる。
だからカカシ先生、ううん、5代目火影様。
・・・オレを封印してください。
「継承の儀式は終わった」
そう告げて、カカシは跪く青年の頭上に翳していた手を下ろした。
そのまま、青年の額に巻かれていた額当てを外す。
「おまえを6代目火影に任ずる」
「・・・御意」
ゆっくりと立ち上がった青年はカカシと変わらない程の長身で、細身だが鍛え上げられた身体はしなやかさと強靱さを兼ね備えている。
だが、子供の円みがすっかり抜け落ちた端正な顔からは、何の表情も窺えない。
史上最年少で里の頂点に立った誇らしさも興奮も戸惑いも、全く何も。
ひとの血が流れていないみたい。
と誰かが彼を評したことがある。
泣くことも怒ることも笑うこともなく、すべての感情を削ぎ落として、ただ忍びという名の機械があるみたいだ、と。
「サスケ」
けれどカカシは覚えている。
無口で無愛想で、あの子の言葉ひとつでおかしいくらい一喜一憂していた不器用な少年のことを。
世界をなくして、ゆっくりと心を凍らせていく姿を。
「オレの知ってることは全て伝えたよ」
火影の知識も術も秘密も、何もかも。
「後はおまえ次第」
深い闇色の瞳が狂おしい光を帯びる。
しかし一瞬だけでそれは逸らされ、無言で立ち去る後ろ姿にカカシは肩を竦めた。
(オレを封印してください)
あの子の声を思い出す。
小さな声で、でもはっきりと。
最後まで笑顔を浮かべてた。
なあ、ナルト。
カカシはこっそりかつての教え子の名を呟く。
今では禁忌とされ、殆ど誰も呼ぶことのない名前を。
ナルト、おまえ間違えちゃったね。
世界の美しさとやらをサスケに教えてやれる人間なんか、どこにもいない。
しょうがないよ。
サスケにとっては、おまえが世界の全てだったんだから。
どうして分からなかったんだろうね。
おまえもサスケも、あんなにお互いのことしか見ていなかったのに。
お互いの瞳に映る自分からだけは目を逸らして。
「・・・分かってて止められなかったオレも同罪だろうけど」
そして、またひとつ正しくない選択をした。
木の葉の里を統べる者としては最悪の。
それでも、あの子達にとっては、多分最後の。
「今度こそ、本当の望みを間違えるなよ」
低く呟いて、カカシは手の中の額当てを放り投げた。
まとまりのない話になってしまいました。
実は、いつか書きたいなと思ってる話の序章なのですね。
短気なんであまり長いの書けないため、なかなか書く決心がつかないという・・・。
まあ、これだけでも話になってるかなーと思ってアップしてみました。