包帯をほどいて、ガーゼをはがす。
 現れるのは、うっすらとかさぶたに覆われた、しかしまだほんの少しの刺激で血が滲み出しそうな傷口。
 腕、足、腹、首筋。
 身体中至る所に巻かれた包帯に同じ作業を繰り返し、最後に頬の絆創膏をはがす。
 久しぶりの外気は妙にひりひりして、少しばかり不快だ。


 
 




 








 あいつの服を脱がせて、自分も脱ごうとして、うっかり触れた布地の感触に眉をしかめた。
 案の定、ナルトは気遣わしげに覗き込んでくる。
 「見てる方がいたいってばよ、その傷」
 「気になるかよ」
 気になるだろうな。
 こんな間近で見せられちゃ、罪悪感がつのる?
 「せめてばんそーこーくらいした方が‥‥」
 「うっとーしーだろ」
 見せつけるには、この方が効果的だろ。
 おまえからすれば、これは、オレがおまえをかばって受けた傷。
 オレからすれば、おまえを釣り上げるエサ。
 「今にも血ィでそうってば」
 「おまえが引っ掻かなきゃいいだけだ」
 いい加減黙れ、と唇を塞いだ。


 組み敷いた身体の滑らかさ。
 あちこちに触れて、感触を楽しむ。
 「‥‥おまえ、千本で刺されたのどこだっけ」
 途端にびくっと強張る身体。
 「もう全然分からねーな」
 シミひとつない肌をまさぐるオレの手には、赤黒い傷。
 おまえと同じ時に受けた傷。
 ナルトは怯えた瞳をしてオレを見上げ、嗜虐心をそそる顔。
 「つっ!」
 誘われるまま肩口に顔を埋め、思いきり歯を立てる。
 微かに広がる鉄の味と、白い肌に一筋流れる紅い色にくらくらしそう。
 「何するっ‥‥」
 「どうせ、すぐ治るんだろ?」
 ナルトは一瞬言葉を詰まらせて、それでも何かを言おうとして唇を開く。
 オレは息を詰めてそれを待ち受け、
 しかし、何の言葉も紡ぎ出されないまま唇は閉じられる。
 オレはひとつ舌打ちをして、諦めたように投げ出された身体を抱き込んだ。


 このウスラトンカチ。
 おまえ、まだオレに隠そうとする。
 尋常でない治癒力の高さ。
 里人の過剰なまでの憎悪。
 時折、おまえから染み出してくる異様なチャクラ。
 導かれる選択肢はそう多くないというのに。
 オレが気付かないと思ってるのか。
 このままずっと隠していくつもりか。
 そっちがそのつもりなら、オレも相応にやらせてもらう。


 苦し気に顔を歪めて、おまえがオレにすがりつく。
 抱きしめて、目先の快楽のおもむくままに、
 おまえにヒドイことするのは気持ちいい。
 逃げたがる身体を捕まえて、最奥までオレを刻み込む。
 達成される支配欲。
 それは、一瞬だけの。


 ああ、やっぱりこれだけじゃ足りない。


 オレが本当に貪りたいのは。
 傷の残らないカラダと裏腹の、傷にまみれたおまえのココロ。
 生まれ落ちた瞬間から傷を抱え、負わされ続け、痛みすら麻痺したおまえのナカミ。
 膿み爛れて腐臭漂う傷口に牙をたて、血の一滴も残さずに啜ってやりたい。
 全部たいらげて、おまえがカラッポになっちまったら、その時オレは満たされるのだろうか?


 それでもおまえが隠したいなら。
 いいさ、気のすむまで隠していろよ。
 けれど、暴くことも癒すこともさせないんだったら、その代わりに。
 その傷、全部オレのに変えてやる。
 他のやつらが付けた傷なんて、もう分からないくらいに。
 それくらい当然の権利だろ。
 だって、先に傷を付けたのはおまえの方なんだから。


 「サ‥‥スケェ!」
 助けを求めて縋る手が、傷口を掻きむしる。
 薄皮一枚のかさぶたは容易く剥がれ、血が流れ出す。
 「引っ掻くなっつったろ」
 無造作に手をとりあげ、血で汚れた指先を銜えさせると、嫌がるように首を振る。
 「しっかり舐めろよ。‥‥おまえが流したオレの血だぜ」
 一瞬強張って、従順になる身体。
 湿った音が響いて、おまえの頬を伝う涙に、知らず笑いが漏れる。
 痛いだろう?
 オレが流した血は、もはやオレを傷つけずにおまえに傷を残す。


 だけど、ナルト。
 おまえが本当に付けたのは、
 こんないつかは消える傷じゃない。
 おまえが与えたのは、 
 オレの心のいちばん深い場所に刻み込まれた傷。
 それは、永遠に血を流し続ける致命傷。
 ‥‥‥治す気もないけどな。


 その代わり、
 代償はもらう。
 おまえのすべて。
 醜い傷さえ愛しいおまえのすべてを。
 


  

 これ、鬼畜になってるかなあ。
 相方があんまりうちのサスケ、情けないーってのたまうもんだから、情けなくないサスケに挑戦!がテーマだったんですが。
 ちょっと極端ですか、やっぱり。
 でも、最中書いてないしー。(つーか書けないから逃げてるだけだったり)
 なんか書きやすかったのでよしとしたいです。

 
 

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