子供はね、好きでも嫌いでもないよ。
てゆーか、興味ない?
遠くから見てる分には、可愛い時もあるかもしれないけどね。
泣くわ騒ぐわ言葉は通じないわ、まだ人間未満の生き物なんて、近くにいたら疲れるだけでしょ。
そーゆーのはタルイから、なるべく近寄りたくなかったんだけどねえ。
何の因果か、センセイなんてショーバイ始めちゃったからしょうがない。
子 守
誰にも見つからない木の上。
うららかな陽射し。
涼しい風。
手の中には、愛読してるシリーズの最新刊とくれば、まさに理想の休日ってとこなんだけどね。
そうは問屋が下ろさないのが世の常なんだな、これが。
真下には、巻物を広げて唸っている金色のつむじが見えている。
うずまきナルト。
オレの最初の部下のひとり。
休日までお勉強とは熱心だね。
あの頃のオレに爪の垢でも飲ませてあげたいよ。
朝早くからここにいて、もう昼近くになるけれど、いつまでも同じ問題に引っ掛かっているようで、これは先生としては助言のひとつもしてやるべきなんだろうが。
‥‥‥あ、やっぱりその必要はないか。
「ウスラトンカチ」
お決まりの台詞と共に現れたのは、相も変わらず仏頂面したうちはサスケ。
かなり前からその辺をうろうろしてたけど、ようやく声をかける決心がついたよう。
もはやルーティンワークのような口論の後、どうにか二人仲良く勉強が始まって。
まったく、微笑ましいったら。
最初は。
こりゃ面倒くさいことになったと思ったな。
九尾の器と写輪眼の生き残りなんて、よりによって一番面倒なのをまとめてよこすかね?
げにすまじきは宮仕え。
しかし、箱を開けてみたらまあ不思議。
なんか予想外に楽しいことになってるし。
寄るとさわると喧嘩ばかりしている二人の子供。
けれど、それは主に素直でない黒髪の子供のせい。
すかした顔しながら、やたらと突っかかって、わざと悪口を言って気を引こうとして、そのくせ何かあるとすぐ助けに入ろうと臨戦体勢。
挙げ句に暇があればじっと見てるし。
普段の他人にまったく関心をみせない態度はどこの誰ってカンジ。
あからさますぎです、サスケくん。
でも肝心なナルトにまるっきり通じてないのが、笑い‥‥いやいや涙を誘うんだよねー。
いや、真面目な話、サスケには頑張ってほしいんだけどねえ。
何しろ、寂しい寂しい狐憑きの子供を救ってあげられる可能性を持ってるのは、おまえだけなんだから。
あの子供を哀れと思う。
里中から疎外されて生きてきて、それでも前を見ている姿を健気だと思うよ。
‥‥けれど、それだけ。
多分それはあの子をこよなく可愛がる中忍の先生も同じだね。
愛しくはあっても、おまえが必要だとは言ってあげられない。
おまえだけが特別なんだと、欲しいんだと。
そんな絶対的な感情は、与えてあげられない。
だから、サスケ、おまえには期待しているんだよ?
あの子が何よりも欲しくて欲しくて、でも得られるはずがないと諦めてしまっているモノを、おまえならあげられるだろう?
すべての感情を注ぎ込むように、あの子を想うおまえなら、
あの子の餓えた心を、溺れるほどに満たすことができるだろう。
そうしたら、それがいつか、あの子をこちらに引き止められる鍵になるかもしれない。
‥‥とは言うものの。
「ばかにすんなっっ、もう帰るっ!」
あーあ、逃げられちゃった。
好きな子に素直になれない思春期は分かるんだけどさ。
ちょっと手が触れたくらいで、あそこまで照れ隠ししなくてもいいんじゃない?
(なーんて考えるのは汚れたオトナのたわごとでしょーか)
ただでさえ表情出にくいんだから、恥ずかしいからってあーんな顔してたら、ナルトには怒ったようにしか思えないよ?
まだまだ修行が足りないねえ。
しょうがないから、ここはやっぱり先生の出番?
「とっとと失せやがれ!」
あーあ、いくらナルトのこととはいえ、ちょっと図星をさされたくらいでその態度はどうよ?
しょうがないから退散するけどね。
それにしてもサスケくん、短気は損気。
無闇に感情を出さないのも忍びの条件のひとつです。
おかげで先生のありがたーい忠告、聞き逃しちゃったでしょーが。
ナルトの『だいっきらい』
サスケにしか言わないって知ってた?
‥‥あまり嬉しくないかもしれないけどね。
あの子はどんなに傍若無人に明るく振る舞っているように見えても、
いつも人の顔色を窺って生きてきた。
少しでも嫌われないように、厭われないように、冷たくされないように。
その努力が報われたことは、あまりにも少なかったのだけれど。
それは、オレや大好きなイルカ先生に対しても同じ。
べったり懐いてはくるけれど、少しばかりわがままを言ってみたりはするけれど。
どこまでなら許されるか、いつもこっそり距離を測ってた。
そんなナルトが、何も考えずに感情をそのままぶつけるのは、サスケだけなんだぞ?
多分それは、表面ではどう思ってても、それこそ大嫌いなんて言葉をぶつけてしまっても、
サスケは自分を見捨てない
離れていかない
そう知っているから‥‥信じたいと思っているから。
だからさ。
先生が思うに、お前ら、十分脈アリなんだけどねえ。
まあ、本人聞く耳持たないなら、無理して教えることもないし。
もうちょっとこじれたままでもオレ的には楽しいし。
どうせそのうち何とかなるでしょ。
ナルトは相当鈍いけど、それを補って余りあるほど、サスケ、執念深そうだし。
ま、遅かれ早かれ時間の問題だろうね。
子供は、ホントは今でもそれほど好きじゃないよ。
でもまあ、一緒にいれば情が移るというもので。
ほら、世の中の親ってモノがみんな子供好きとは限らないけど、
それでもウチの子だけは可愛いっていうし。
それと同じようなもんでしょ。
なんたって見てて飽きないし。
楽しければ少々の面倒はしょうがないか、なんてそういえばオレは根っからの快楽主義者で刹那主義者だったっけ。
とりあえず、いい場所探して、本でも広げて、休日の続きといきましょうか。
初登場のカカシ先生。
うちのカカシはサスナルは生徒として可愛がってます。本当です。
心配してるんだか面白がってるんだかよく分からない人になってしまいました。