IF





あ。
微かに声にならない響きが、闇に響く。
妙に艶っぽい。
この、存在しないはずの女は。多分あたしよりも女なのだ。
目の前の白い背中を指でたどってみる。
細い腰をきつく抱きしめて。
きれいな形の胸に触れてみる。
や・・
それまでなすがままになっていた女が、涙ぐんだ目で振り返る。
長い、緩やかな金色の髪。大きな青い目。
不安そうなそのしぐさに、却って酷いことをしてしまいそうだ。
「サクラちゃん、どうして・・」
答えずに、口づけて。
それだけで大人しくなるから。あまりにもたやすくて。
愛してあげる。あんたのいいように。
「あんた、かわいい、わ。」

あたしがほんとに男だったらそしてあんたが女だったら、
きっとほんとに愛してあげてもいい。
だけど、ほんとはあたしは女であんたは男だから。
こうやって。
お互いに化けてるときだけ、愛してあげる。
サクラという男の体とナルトというおんなの体。
本当のかたち、何もお互い残さずに。
あたしたちは偽りだらけで、ほんとは服も脱いでいない。
あたしが触れるこの胸は、あるはずのない空間。
あたしのこの男の体だって、きっと、ただの空想。

仮想空間の、この気持ちは、だから、嘘でいい。

あんたが男だったら。成績のいい私をほめるかわりに、親が投げた溜息。
女の癖に、聞き飽きた、非難。
あんたみたいな女だったら、よかったの?
笑ったり、泣いたり、怒ったり。泣き虫で、わがままで。甘えん坊で。
だけどあたしはあたし。
ほら、あたしの胸の中で、
いま、願いがかなうでしょう。

「サクラちゃん」
ナルトが言う。
「大好き・・」
そうね、あんたは、それしかないんだよね。
だけどあたしは違う。
もしも男だったら、女のあんたを愛してあげる。
そうしてあんたを手に入れて、その先に見えるのはなんだろう。







戻る