月
まだだ
まだ動ける!
まだ・・・
強くならなきゃ!
悲鳴をあげそうな体を気力で押さえ込んで、印を結ぶ。
かれこれ何日こんなことを続けているのだろう。
イナリの父ちゃんの話を聞いてから。
途中からはサスケと一緒に。
ワクワクして、一生懸命で、だけどなんとなく楽しくて。
強くなったと思ったんだ。
だけど、サスケにも、白にも及ばなかった。
自分は、足手まといだった。
ちっとも強くなんかなかった。
サスケと一緒に木のてっぺんまで登れて、おいついた、って思ったのに。
だけどよく考えてみたらサスケにはまだ、自分をかついで帰る余力があった。
白の術の中で、自分をかばいながら戦ってた。
挙句の果てには気絶した俺を、サスケがかばって。
あまりにも、無様だ。
情けなくて、悔しくて、どうしたらいいのかわからなかった。
あの日からもう、2週間は経ったろうか。
毎夜修行といっては森へと抜け出す。
どうせ寝ていても九尾の悪夢にうなされるのだ。
体力の限界が来るまで訓練して、疲れたらそのまま深く眠る。
そして、朝起きると家に戻り。
そんなことを繰り返し。
ある夜のこと。
もう絶対!
死なせないんだってば!
膝がガクン、とくずれた。
もう限界だ。
地べたに倒れこむ。
「情けねえ・・」
こんなんじゃ、仲間なんて、いえない。
かばわれちゃいけない。
守られちゃいけない。
これじゃ、アイツの側にいられない。
「もう終いか?」
どきりとした。
刀を持った男がにやにやと笑いながら現れたのだ。
ガトーの雇われの残党がまだ残っていたのか。
とりあえず仲間はいないようだ。
普通ならなんとでもなる。が、今、この状態では。
「ほう、まだ立てるのかい、意外と根性あるねえ」
歯を食いしばって、立たなきゃいけない。
泣き言は言わない。
助けなんて要らない。
力だけが欲しい。
「おれは、ウズマキナルトだってばよ!」
誰も傷つけなくていい力だけが欲しい。
大ぶりに上段から下ろされる太刀をかわし、懐へ飛び込む。
クナイで深く右腕に切りつけると、すばやく後方へ跳んで逃げた。
「この・・」
油断している一太刀目、刀使いの苦手な懐に飛び込んで切りつける。定石。
だけど体力のなさからか、人を傷つけることへの思い切りの悪さからか、それは思ったよりも軽症だった。
次はかわせないかもしれない。
2太刀目を浴びせようとした背中に深く手裏剣が突き刺さり、男は悲鳴をあげた。
腹いせに自分を手にかけようとした男は、見えない新手におびえて逃げた。
闇の中から、少年が現れた。
「・・・・なにしてんだよ、サスケ。」
また、だ。
「リハビリ」
「こんな時間に?」
「お互い様だろ」
「また、助けてもらっちまったのな・・」
まだ、だめなのか。
「ドベ」
「なに?」
「1人でうろちょろするからそんな目にあう。」
「・・・」
「帰るぞ」
そういって、背中を向けて歩き出す。
「・・どうすれば、強くなれる?」
悔しくて呟く。
「そんなこといっているから、いつまでたってもドベなんだよ。」
「おまえさ・・・なんか、怒ってる?」
「怒ってねえよ」
「そう」
「馬鹿だとは思ってる」
「・・」
そうだよな。
何も言い返せずにうなだれると、溜息が一つもれる。
「・・・帰るぞ・・・みんなが心配してる。」
「・・・ごめん」
やっぱり、足手まとい。ちっとも追いつけない。
仲良くなったなんて、錯覚。こいつは弱い俺に合わせてただけ。
なのに俺、1人で浮かれちゃって。
サスケは空を見上げて、呟く。
「月が」
「へ?」
「あの時と同じだな。」
俺も見上げる。
そういえば、おんなじ形だ。
あの時から、結構経ったもんなあ。
あの時は、ただ嬉しくて。
サスケと一緒に。
どんなことでもできるような気がして、
どこまででもいける気がして。
「・・・寝てんのも、飽きた。部屋の景色なんてつまんねえし。」
「は?」
「明日からは俺も付き合ってやるから。」
「へ?」
「っていっても、見てるだけだけど。」
「・・・?」
「止めても無駄だろ、ついててやるよ。」
「・・・」
「そのかわり、ちゃんと飯とか風呂とか寝る時間には帰ること。じゃねえと・・・」
「なんで!俺ってば、そんなに信用ない?そんなにお荷物?そりゃ、ドベかも知んないけど・・」
「んなんじゃねえよ。ここまで歩きゃ結構なリハビリになるだろうし・・・
だいたい、とっととドベ卒業してもらわねえとさ。お前庇われるのやなんだろ?うぜーよ。」
「・・・」
うざくて悪かったな!なんか納得いかなくてぷうってふくれると、優しい目で笑った。
あの時みたいに。てっぺんまで登り終えて動けない俺に笑いかけた、あのときと同じに。
「一緒にいれるといいな」
「・・・」
いいの?でもどこに?そしてどこまで?
「どこまでも」
そういうと、喋りすぎた、というように早足で歩き出す。
どこまでも。
俺も一緒にいたいってば。
そう思いながら、サスケの後を追った。
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