START
今日から新学期。火影岩からの冷たい風を顔に受けて、ほっぺだけが真っ赤だ。
すうっと息を吸い込んで。
「サースケー!ガッコいこ!」
門の遠くでばたばた、がらがら、音がして、サスケが走ってくる。
「よお」
「おはよ。」
えへへ、と笑うと、ちょっと動きを止めてこっちをじっとみて
「おはよう。」
ゆっくりと笑いかえす黒い髪と黒い目のキレイな顔。
おれはうずまきナルト。目の前のちょっと背の高いこいつはサスケ。うちはサスケ、っていうんだ。
冬休みにいろいろあってトモダチになった。
アカデミーに三学期から編入ってことになって、おれ先輩ってやつだから、一緒にガッコ行ってやるんだ。
「さっみー。」
はあ、っと吐く息は真っ白で、まるで煙突になった気分。
「手を出せ。」
そういうとサスケが手を握る。
「・・・・・・ななななに???」
「あったけーだろ。」
そういわれると確かにあったかいサスケの手。
「うん」
「ならよかったな。」
そのまま手をぎゅうっと握られたままで。
なんでだか嬉しくてほわほわして、全身寒くなくなった気がして、またえへへと笑った。
「じゃあなー、がんばれよ。」
門で別れて一目散にナルトは教室に走っていく。
その後姿を見送ってサスケは教室に向かう。
今日はほんとは随分と早起きをした。
いつくるのかとそわそわと待って。
きっと今日は寒いからあいつの手は冷たいだろうと、手袋を二つ引き出しから出しかけて・・・・やめた。
かわりに火鉢に熱くなるくらい自分の手をかざす。
(あしたも寒いといい・・・)
じんわりとつないでいた感触の残る拳をぎゅっと握る。
教室に入るのはひどく気が重かった。
がらりと戸を開け自分の机に向かう。小さな机ときゅうくつな椅子。
「おはよう、うちはくん。」
頭2つは小さい子供が声をかける。
「おはよう。」
「ねえねえきいた?きょうはね、かけざんするんだって。むつかしいよねー。」
「そうだな・・・」
(かんべんしてくれ・・・)
サスケは3年生になってしまった。
サスケの名誉のためにいわせてもらうならば、彼は決して頭が悪いわけではない。
前の学校では1,2を争う成績だったし、編入試験の成績も良かったといえるだろう。
けれど、ここは特殊技術習得の専門学校なのだ。
名門の子弟ゆえ幼少の訓練でそこそこの忍術系の実技はこなせるが、基礎理論ができていないこと。3学期という半端な時期であること、などを考慮して、「きみのためを思っての」結果、なんてぬかしやがった。
冗談じゃねえ。
ナルトは5年生なのだ。つまり、つぎの学年を決める試験までに追いつかなければ同じ教室で学ぶ事もできないわけで。
「うちはくん、どうしたの?」
「なんでもねえよ。」(・・・ほっといてくれ。)
こんなことをするために編入したんじゃない。
死ぬ気で飛び級してやる。そう心に誓うのだった。
「ナルトー」
休み時間だだだと向こうからかけてくる少女。
「サクラちゃん?」
とーう。ためらいなくフライングボディーアタック。
「ぐへ!!・・・い。いい攻撃だってばよ・・・」
かなり効いた。
「見たわよ、ナルト。あんたサスケ君と一緒に登校してるんでしょ。どういう関係なの?」
「ど、どうって、トモダチ・・・」
「やだー、冗談も休み休み言ってよ。『うちは』は木の葉でも1,2を争う名門なのよ?
有名人よ?王子様みたいなものよ?あんたみたいなのとトモダチなわけないでしょ。」
「って、有名なの?サスケって。」
「当たり前じゃない。里で知らない人なんていないわよ。特にくノ一で知らない子なんていないわ。
なんたって、うちはでしょ、おまけにあのルックス。アカデミーに来て欲しいとは思ってたんだけどさあ。ああ、もうこれってあたしたちって運命よね?キャーいやーv」
「・・・・あいつトモダチたくさんいるのかなあ。」
「そうね、いるんじゃない?あ、彼女いるか知ってる?ねえあんた話したんでしょ、ナルト。」
「知らない・・おれ、あいつのこと全然知らない。」
「そ、であんたサスケくんのなんなわけ?トモダチってマジ?なら紹介して欲しいんだけど。」
「・・・・ううん、ちょっと、最近会っただけだってばよ。だいたいサクラちゃん、おれ、おれはー?」
「あんたー?アウトオブ眼中よねー。」
そうかあ、とちょっと寂しくなった気持ちを隠して笑う。
(あいつ、別にひとりじゃないんだ・・・)
サスケとはこの半月ほど前に出会った。一緒に修行したり、ご飯食べたり。
毎日一緒にいてくれて、2人で過ごしてたから、なんにもきかなくてもそれだけでよかった。
お互いの事なんて話したことは殆どなくて。
(トモダチだって好きな子だっていて当たり前だよなあ。)
「ケガラワシイ」
大きな屋敷の並ぶサスケのうちのすぐ近くで。見知らぬ身なりのいいおばさんにののしられた。
(サスケは迷惑じゃない、っていったけど。)
考えるとなんだかぎゅうぎゅうに胸が苦しくなって。
たまらずに3年生の校舎に走った。
ざわざわと廊下に黒山の人だかり。
「あれがうちはか。」
「へーあいつがね。」
「サッスケくーん、こっち向いてーv」
みんなうちはサスケを見にきているのだ。
遠くから見ていると、ちょっとだけ自分と目があって微笑んだ気がしたけど。
「いやー、こっちみたわよおーv」
「あたしに微笑んでくれたわーv」
嬌声があがり、群がる人の向こうに見えなくなる。
とおくなる。
(・・・・でも手、つないでくれたんだってば・・・)
ずきずきと胸がきしむのをこらえる。
(サスケ、誰にでも優しいのかなあ。だれにでも手えつないだりすんのかなあ・・・。)
普段の彼を知っている人が聞いたら瞬時に否定するだろう疑問が胸をよぎる。
(おれと一緒にいたりしないほうがいいのかも・・・・・)
新学期最初の忍術の時間がきて、先生が言う。
「この木登りができないのは落ちこぼれ1人だけだったよな、おい、できるようになったのか?」
見下すような意地悪い笑み。くすくすとあちこちからのいやな笑い声。
「できるってばよ!おれってばそのくらい朝飯前だってば!」
嘲笑うような視線を無視して、するすると登ると、細い枝まで伝い3回転ジャンプをして華麗に着地。
「どうだってばよー!」
オーっという声とやんやの拍手。だが先生は渋い顔をして吐き捨てるようにいった。
「これで人並み、いやまだそれ以下ってやつだろうが、うずまき!いちいち調子に乗るな。」
その目にはやはりナルトを認める気なんてさらさらないようで。
それでもナルトはまっすぐに先生を見るとにっと笑い、列に戻る。
「おい、おまえどういう訓練したんだよ。全然駄目だったくせしてよ。」
「すっげー、進歩。やるじゃん、ナルト」
隠れてこそこそとあちこちからかけられる賛辞。
「そこ!しゃべるな!」
特訓をして自分は強くなった。そして認めてくれるやつがいる。
(だから、今はまだあんたに認めてもらわなくったって平気だ。)
サスケがいるから。
ふ、と頭をよぎる。
怒りの目。憎悪の目。
(離れたほうがいい。)
昼過ぎにナルトと一緒に帰ろうと思い立って、サスケは教室で暇をつぶしていた。
3年生の終わる時間と5年生の終わる時間は1時間ほど違う。
校庭をみていると、ナルトの姿がある。どうやら忍術の実技の時間のようだ。
ナルトが木に登るようだ。遠くからでも得意満面なのが分かってほほえましい。
おもわず窓から飛び降りると近くの茂みまでいってのぞき出す。
休みの間に登れるようになったとはいえ、あいつはどうにもうかつな奴だから足を滑らせるかもしれない。
そうしたら脳震盪を起こすかもしれないし、落ちる場所によっては怪我するかもしれない。
(心配だから見守ってるんで、覗きなんかじゃねえからな。)
そうやって見ていると、登っていって空中回転して着地。
(おい、教えてねえだろうか、そんなあぶねえこと。)
それでも上出来の演技にほっと胸をなでおろし、ナルトの笑顔に満足する。
体育教師の嘲笑うような顔が驚愕してすぐに苛立つのもみてとった。
(今のはほめてもいいだろうが。てめえ、それで教師やってんのかよ。)
授業が終わり、体育教官室へ戻ると教師は教本をばらばらとめくる。
「くそう、うずまきの奴、つぎはあいつの出来ない・・・ああ土遁と分身の応用のこれだ、これがいい。」
くくく、と教本を手に笑っていると、だん、と音がして教本にクナイが突き刺さった。
「うずまきナルトに手を出すな。」
背後から首に当てられる冷たい金属の感触と冷たい声。
「て、だ、だれだ!こんなことをして・・・」
「だれでもいい。忍術教師の癖して生徒に後ろをとられたあげくクナイをつきつけられた、って訴えてみるか?」
「・・・ち・・・」
「訴えてもいいが校長は火影だ。特定の生徒を排除しようなんてあんたの方が分が悪いだろう。」
「うるせえ!うずまきは屑だ!反吐が出る!死んじまっても誰もなんにも言わねえよ。」
「・・・・言いたいことはそれだけか。」
ぎり、と後手にとられた腕がきしむ音を立てる。
「中忍の癖にもろいな・・。安心しろ、まだ折れちゃいない。これは警告だ。」
「貴様あ・・・・!」
教師は力任せに振り返ろうとすると容赦なく腕が軋む。骨の折れる嫌な音。
「2度目はねえ・・・。」
サスケがにやりと笑った。
次の日の朝、うちはサスケは遅刻した。
昼休み、ひどく不機嫌な顔でサスケは5年の廊下に立っていた。
「うずまきー、お客さんだよー。」
ばたばたと走ってくる音。
「あ、サスケ。」
「ちょっといいか?」
「って飯おれまだ食いかけなんだけど・・・・わ・・・」
ナルトの話は無視されてそのまま腕をとられて引きずられていく。
「ちょちょちょっと・・・」
「話がある。」
体育館まで続く渡り廊下まで来て、サスケが向き直る。
「なんで今朝うちに来なかったんだよ。」
「な、なんでって・・」
「待ってたんだぞ。おかげで遅刻だろうが。理由をいえ。」
「べ、別にそのおれ、寝坊しちゃって、それで・・・」
「腹が痛いとか熱があるとかそんなんじゃねえんだな?」
「う、うん・・・・ごめん。あのさ。」
「・・・・連絡なしでそういうことをするな。」
「だからさ、その、・・・・もう明日から行かないってばよ。」
「・・・・なんだと?」
「俺んちとサスケんちってガッコはさんでちょうど反対方向だしさ。また寝坊するかもしれないし、だから。」
「・・・・・・」
「サスケにメーワクだってばよ。だからもう・・・・・」
確かにナルトにとっては負担が大きい。
しかし学年の違う今、確実に一緒にいられるのは朝の登校時だけで。(昨日は結局一緒に帰れなかった。)
この幸せを奪われるのは非常に痛い。
「・・・・・確かにな。」
サスケはこめかみに手を当てて俯く。
「じゃ、おれ教室に戻るから・・・」
そそくさと戻ろうとするナルトの腕を掴む。
「分かった。明日からは俺がお前の家に行く。」
「はあ?」
「それならいいだろうが。俺は朝は起きれなかったためしはないしな。」
「で、でもそれだとサスケ朝すっごい早起きしないとだめじゃん。」
ナルトの家はアカデミーからおよそ南東方向20分、サスケのうちは西南西10分だ。(さあ、計算してみよう。)
「一緒に行くのいやか?」
「そ、そんなことないけど、でも・・・サ、サスケに悪いってば」
「俺はしたくねえことは言わねえ。」
「じゃ、じゃあ俺えっと、せめてあ、朝ごはん作るってばよ・・・」
そういうと、サスケの肩がぴくんと動いて目を何度かまばたきさせた。
「ほんとに?」
「え、あ、いやなら・・・・・」
「嫌なんて言ってねえ。」
「・・・・ん」
朝からナルトのうちにいって朝飯を食い、一緒に登校。
夢のようだ。
まさに早起きは3文の得。
「じゃあ、明日な。」
今度はサスケが帰ろうとして。
「待て!」
今度はナルトがサスケの袖を掴む。
「その、おれといて迷惑じゃねえ・・・の?」
「迷惑だったらんなとこいねえだろうが。」
今朝来なかった理由がなんとなく、分かってしまった。
「トモダチ、だろ?」
だから欲しい言葉をくれてやる。
「トモダチ?」
「だからそう簡単に嫌いになるわけねーんだよ。」
そういうと、こくんとうなずく黄色い頭に。
ふわり。
「だーいすき」
いきなり首にぎゅうとしがみつかれた。
ああ、トモダチって役得だ。
それから10日後。
「ナルトー!開けろ。起きろ。ガッコ行くぞ。」
呼び鈴のないぼろアパートの扉を叩くが返事はなく。
反対にまわって窓からのぞくとすやすやと眠るナルトが見える。
窓の錠をかちゃかちゃとはずすと中に忍び入り、台所に行くと手早く朝食を作ると頭を足でこづく。
むにゃむにゃいいながら目をあけるナルト。
「おはよ・・・・おまえさ足で起こすのよせよ・・・・」
「てめーがとっとと起きねえからだろうが。ほら顔洗って飯食え。」
もそもそとおきだすのを確認して台所で支度するサスケ。
ナルトは今までがかなり無理をしていたのか本来朝はめっぽう弱いようで。
おかげでサスケが朝食をつくっていたりする。
「サスケーごめんね。」
「もう慣れた。人が来る時間には起きてろ。おまえん家呼び鈴ねえんだから。」
「あ、それなんだけどさ、サスケにこれあげるってばよ。」
ごそごそとナルトが出してきたのは・・・・・合鍵という奴か?
「どうせここって鍵あってもなくても似たようなもんなんだけどさー、おまえとかてきとーに入って来れちゃうし。だけどどうせなら玄関から入ったほうがいいかなあって。」
ピンとかで錠を開けるのは朝飯前だが、鍵を貰うという事は意味合いが違う。
「サスケ、たまごやきおいしい。」
ナルトが笑う。
「すきか?」
「すき!」
「・・・・・俺のもやるな。」
「あんがと、サスケすきー!!」
至福の時だ、とサスケは思う。
あとはなんとしても4月には同じ学年になってみせるのだ。
叶わないと言うのなら手段を選ばない自信がある。
なにがどうしてこうなってしまったのかなんて、分からないけれども。
こいつなしでは生きていけない。
こうなったのはこいつのせいでもあるわけだし。
とりあえずセキニンはとってもらおうじゃねえか。
「frozen pink 」のTAKAさまにキリリクとして差し出したもの。
リク内容は「ひとつの出会いは人生を変える」の続きのアカデミーライフってことで。
半年も前にもらったリクだというのに遅くなってすみません。
ついでに内容もなんだかとりとめがない・・・。とほー・・・。(さよ)
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