「サクラちゃんってさ、サスケのどこがスキなんだってば?」
前から思ってた疑問。
ナルトにはいまいち、周囲の女の子たちが騒いでるのが、それがなんでかよくわからない。
「だってかっこいいじゃない」
「きれいな顔してるなとは思うけど、でも、なんか、自分よりきれいって嫌味じゃない?」
「頭いいし、実技も一番じゃない? それを自慢したりしないし」
「サクラちゃんのほうが頭いいってば。俺が「ドベ」だって散々馬鹿にされたぞ」
「クールなところもいいのよね」
「無愛想なだけじゃん、口開けば「ウスラトンカチ」とか「ドベ」とか、嫌味ばっか」
「里でも有数の、すごい血筋らしいし。玉の輿よ!!」
「俺にはそんなこと関係ないの! 里で一番はうずまきだって言われるようになるんだから!!」
「…………あんた、サスケ君に何の不満があるって言うのよ」
「ある! ありまくる!!
だって、俺はサスケなんてだいっ嫌いなんだから!!」
隣であきれるのは、桜色の髪の少女と、そして、ちょっと離れたところで1人極力二人を見ないように立つ話題のその人。心なし背中のうちわが寂しそうだ。
今日も今日で、集合時間にまったくこない上司兼先生を待ちあぐねて、女の子たちはらしく話に花を(?)咲かせている。
しかし、そのほのぼのとした雰囲気は表のもので、桜色の髪の少女の言葉には各所に的確に刺があって、ナルトはその刺にざくざくと刺されて、しかも逃がしてくれないという状態にあった。
だって、と、サクラは思う。
スリーマンセルを組んでからというもの、サスケに近づけたとチャーンスッ!! と思ったのもつかの間。突っ走るナルトをサクラが止められるわけもなく(頭脳労働を自負しているし)、サスケがその役を担うのは仕方がないとして、なんだかそんな二人の関係が、微妙に思えてしまうのは親友であるナルトと片思い相手サスケだからわかることであるのかもしれない。
「あんた、サスケ君に少しは感謝なさい。
ほら、昨日もあんた怪我してたじゃないの。いつもの調子で突っ込んでたらそんなもんじゃすまないのよ?」
「昨日のなんて怪我には入らないってば! ほら、もうかさぶたになってるし」
その、かばわれるのがだいっ嫌いなんだってば、小さくつぶやいた言葉はサクラだけに聞こえる言葉。
知ってるわよ、あんた、サスケ君とは対等でいたいのよね。
サクラは心の中でつぶやいて、そんなナルトに微笑んだ。
「でも、サスケ君の悪口言いふらすのは止めなさい!!」
「言いふらしてないもん、叫んでるだけだもん」
「それがいけないのよ」
アカデミーのころから、その金色はいつでも目に付いていた。
騒ぎの元はいつでもあいつだったし、1人離れてぽつんと立っている影もやはりあいつだった。
いつか、くの一クラスのやつに「好きな女の子ってどんなの?」と聞かれたので、考えるのもめんどくさい適当に「髪の長いやつ」と答えた。そのとき一番にばっさりと髪を切ったのも、その金色だった。そのきらめく金色は目立っていて、ちょっときれいだなと思っていたことにそのとき気がついた。ふと、目で追っているのは、あいつがあんまり目立った――ドベだったからに違いない、と信じていた。
そして、あいつも一人だということに共感しているのだと思っていた。
あの、空色の瞳を間近で覗き込むまでは。
「お前にサクラちゃんは渡さないってば!!」
「はあ?」
スリーマンセルとして同じチームになって、一番にあいつに話し掛けられた言葉は、それだった。サクラが自分を好いているということは知っていたし、サクラも隠そうとしていないし。だが、ナルトにいきなりそんなことを言われるなんて思っても見なかったし、言われる理由もまったく見当たらない。
「ナルト!! 何てこと言うのよ! もう……ごめんねサスケ君」
「サクラちゃん、だって、俺サクラちゃんのこと大好きだもん。
こんな人を小ばかにしたようなやつ、サクラちゃんにはもったいないってばよ」
言いながら、ひしとサクラに抱きついて。そして、サクラにどこからか取り出してきたハリセンで容赦なくはたかれる。
「大好きだったら邪魔しないでちょうだい。
そんなおばかなあんたも私は好きだけどねv」
にっこり笑って、心の中はちょっと怖い。それでもナルトはひるまずに、
「だって、俺はサスケなんて大っ嫌いだもん!!」
と、はっきり言い放った。
なんだか、心の中がむしゃくしゃしたのを覚えている。
今までも人に嫌われたことなら何度もあるが、人のことなんて気にしたことがなかった。なのに、どうしてこんなにむかつくんだろう。
「俺だって……」
といおうとして、ぷうと頬を膨らませてにらみ付けている、ナルトのその青い瞳に自分の顔が映っていて。思い出したのは、説明会のときのあの、不意な事故。
「?」
「別に俺はお前のこと嫌いじゃない」
ふんと、そっぽを向きながらちらとナルトを見やると、一瞬後に頬を赤くして。
「俺が嫌いだからいいの!!」
と、サクラを振り払って後ろを向いてしまった。
その様子は、何かにいているなあと考えて考えて、思い至ったのは、家に帰り着いてから。
確か、前にちょっと手元を狂わせて本を取り落としたとき、通りがかった女の子が拾ってくれて、それで「ありがとう」と一言いったときに、相手はそんな表情をしなかったか。ちょっと照れたような、そんな。
「そう、嫌われてるわけでもなさそうだな」
ほっとして、はたと止まる。嫌われてなくってどうだって?
金色の髪と空色の瞳が頭から離れない。
あいつがどう思っているかなんて、そんな、人の心の中を知りたいだなんて思ったのは初めてのことで、気が付いて自分でびっくりした。
気が付くと、なぜか目で追っていた。
サクラちゃんが好きだといったから、どんなやつかと思って見たのが、一番初めにあいつを認識したとき。そのときもあいつは1人で、教室の隅でクラスメイトを見やっていた。それからいつ見てもあいつがクラスメイトと楽しそうに会話してるところなんてなかった。
「クールなのよ」サクラちゃんはそういう。でも、1人の寂しさは自分が一番よく知っていて、きけばあいつは、勉強もできて実技もできて家柄もたいそういいらしい。一見して分かるように顔は悔しいけれど絶品。足りないものなんて無いように思えた。だけど、あいつはいつも1人。
そうやってわざわざ足りないものを作るあいつに腹が立った。足りないものを埋めるために努力している俺とは正反対の。
でも、最近気が付いた。あいつは足りないものを足りないと思ってないんじゃないかって。1人でいることに慣れてしまっただなんて、俺みたいで寂しいね。
だから今は、なんでかスリーマンセルで同じチームになっちゃったから仲間として俺を見させてやる。アカデミー時みたいに、遠くを見るような目で見られるのなんてキライ。俺は皆に俺を認めてもらいたいから。
お前になんか負けない。
でも、いつのまにか、あいつが俺の目標になっちゃったのは悔しいから、だからあいつは大嫌い。
そう思って、自分でもわかってる。意地になってるなって。はじめは、あいつもなんだかんだと文句を言ってきたけれど、ちょっとたってからは俺がいいところを見せようとはしっても、何だか「仕方がないな」って顔をしてフォローしてくれる。それがむかつくのは、手助けされてるからだと思ってた。
だけど、ふと一人になったとき気がついてしまった。俺が何かをするときにあいつの反応をちょっと予想していて、でもその反応は返ってこなくて。俺にかける言葉が少なくなったんじゃない? それを寂しいって思ってしまった俺が、わからないよ。
そんなときに、
「ナルト」
ふと呼び止められて、それが何だか久しぶりに思えて、何文句いってくるのかと身構えてたら
「俺はお前のこと好きらしい」
?? 一瞬訳がわからなくて
直後に脳裏に浮かんだ言葉を叫んで目を閉じた。
「俺はお前なんか大っ嫌いだってば」
なんで、こんなに必死に言ってるんだろう。
いま一番認めてもらいたい人は誰ですか?
今日の任務でも、ナルトはいいところを見せようと、先走って。でも、結局いいとこらはサスケにとられたりして。勝手にむくれて。解散の合図とともに
「絶対、お前になんて負けないんだからな!!」
と、言い放って勢いよく帰ってしまった。
「サスケ君」
残されたサクラが無言でナルトの背中を見送るサスケに声をかける。
呼ばれたサスケはめんどくさそうにちらと振り返る。
「こないだ、ナルトに告白したんだって?」
「……ナルトがいいやがったのか」
仏頂面のサスケに、心なし寂しそうに「そりゃ友達だもの」とサクラ。
「分かるわよ、そのくらい。
で、返事は?」
「……大っキライ、だとさ」
ふうん、と、サクラにとっては予想通りの答えだったようだ。
「いいこと教えてあげる」
にいと笑って、何かを楽しんでそうな表情。
ちょっと聞きたくないです、と思ってしまうところが情けない。
「ナルトが大っキライっていう相手はサスケ君だけなのよ」
あとは自分で考えてね〜
…………
そんなに嫌われてるんだろうか。
まだまだ二人は平行線(笑)