少しずつ、僕の日常に色がつき始めていた。













  Vivid Colors










 まだ小さかったころに、僕は色を無くしてしまった。
 目の前であんまりにもたくさん人が死んだので、その凄惨さを正視できなかった僕は、色を消して逃げた。


 モノクロームの世界では、スープも血もかわらない。
 世界はただ灰だった。
 それが濃いか薄いかの違いしかない、至極簡単な世界。
 だから、その粘度さえ分からなければ、何もおそれることはない。


 長くその色だけ見つづけたので、今では、他の色を渇望することも無くなった。



 けれどある日、ふとあの子を見かけたとき。


「カブトさん!」


 僕を見つけると、すぐに笑って手を振ってくれた。

 よく目立つヒヨコみたいに黄色い頭。
 薄汚れた街中なら尚更だ。
 そして、野外での演習をやったのか疑いたくなる、薄い色の肌。



「あれ・・・?」


 僕は、演じる間抜けな僕のまま、間抜けに呟いていた。

 色だった。
 灰以外の。









 理由はわからなかった。
 けれど、僕は久しぶりに、色を恋しく思った。

 しかし相変わらず、世界は灰だった。
 色づいていたのはあの子だけだった。



 僕は、行動に出た。
 簡単な交換条件だった。








 僕は君から色をもらいたいんだ。

「君は、何がほしい?」

「キスして」

 僕は俄かに理解しかねた。

「だめ?」

 甘えた仕草に、僕は分かったふりをしておいた。
 ここでなにか言うのは得策じゃあない。

 僕は笑顔を作った。

「もちろん、いいよ」

 僕はやや遠慮がちに、軽く唇を重ねた。

「・・・これだけ?」

 見上げてくる、子供のひとみ。

 昔見た深い海のような、風にうねる森のような、不思議な綺麗な色。
 媚びた女に似ているようで、けれど全然ちがう。
 だいたいそんな女の瞳はもう少しにごっている。
 薄いプラスチックに隠した、僕の瞳のように。


「他になにか欲しかった?」

 少し笑いながら返すのは、意地悪をしているみたいで、いい気分だった。

 けれど実際、僕は判断しかねて訊ねたのだけど。
 いつだって君は、きっと誰にでも、そんなんだろうから。


「・・・・・・」



 君は言葉にしない。
 否定しないかわりに、肯定もくれない。

 誰にそんな方法を教わったんだろう。
 それは色とはまた別に、興味深いことだった。


「・・・ん・・・・・・ぅ・・・」

 僕はもう一度唇を重ねていた。
 うっすらと開かれていたそれを、無視することはできなかった。



 僕の腕に、君の指先が絡む。

 そして程なく、少し長かった爪が食い込んだ。



 痛みはあっても、驚いたりしない。
 それは行為と死の距離を体に知らせるための信号。
 この痛みなら、死とは接点がない。


 僕が舌を絡めるのにあわせて、爪は深く潜り、抉る。




 僕は、赤を知った。

 それがあまりにもきれいすぎて、今は他の色はいらなかった。







 君がまだ縋ってくるのを、僕はそっと剥がす。。
 ほしがる唇には、人差し指を当てて。

「今日は、ここまで」


 明日はもっと、他の色を。














 さよがしのぶ様のサイト「DEAD END」様で2222hitをゲットして、頂いてきました。
 リクエストは「カブナルで薬使用」・・・外道なリクです。
 そんなリクをこんな素敵な小説に仕上げてくださったしのぶ様に大感謝です。
 やっぱり、カブトさんはいいですvかっこいいです。
 「キスして」なんていう、天使のような悪魔のようなナルトも素敵。
 しのぶ様の書く文章はものすごく無駄がなくてきれいで、さよはめっちゃあこがれなんです。
 うふふふふふふふふー。うれしいよー。

 カブトさん、素敵ですね。
 淡々としてるようで、底はどろどろしてそうで、私の理想の攻様でございます。
 ナルトがお薬なんですねー。でも、副作用きつそう・・・そこが悦ですけど。
 しのぶ様、こんなへたれサイトにお恵みくださってありがとうございました。(あゆりん)


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