たんぽぽ


 夕暮れの道。
 家路を辿る子供が3人。


 サスケは黙々と歩いている。
 隣ではサクラがやたらと話しかけ、
 そのまた隣でナルトがサクラの注意を引こうと大声で喋る。
 帰り道の度に繰り返される光景。
 感情豊かな二人の子供は、いつでも真正直に好きな相手の隣にいたがるので。
 いつの間にか並び方が定着してしまっている。
 異論を唱えたくても、無口・無表情・無愛想の3拍子揃ったサスケが口に出せるわけもなく。
 今日もひとつ分向こうの金色の頭を見遣っては、こっそりため息をつくばかり。
 「ぎゃーぎゃーわめいてんじゃねえ、ウスラトンカチ」
 「何だってば、いきなり!」
 はしゃいだ笑顔が眩しくて、自分に向けられないことが悔しくて、注意を引こうとかける言葉はやっぱりナルトの神経を逆撫でるものでしかなく。
 思いきり睨み付けられて、それでも自分だけに向けられる表情が嬉しいと思うあたり、情けないんだか何なんだか。
 「ぎゃーすか耳障りだって言ってんだ。んな体力残ってんなら、任務中に、もちっとましな働きしろ」
 「おまえ、まじムカツク! そっちこそ、疲れて喋る元気もないんじゃねーの? この体力なし!」
 「ああ、チャクラの使い過ぎでぶっ倒れたおまえをかかえて帰る程度の体力しかねーよ、俺は」
 またやってしまったと思いつつ、毒舌に限ってよく回る口は、自分でも嫌になるくらい滑らかだ。
 全く、思ってるのと反対のことしか言えない呪いがかかってるとしか思えない。
 特に好きな子に対しては。


 「あ、みてみて。タンポポが咲いてる。随分遅咲きだけど」
 日常と化した口喧嘩を、それでもフォローしようとしてか、サクラが指差した先には、道端に咲く小さな花。


 何となく気を削がれて(本当は喧嘩をやめるきっかけを探してて)、3人で囲むように花を見ていると、
 「タンポポって、何となくナルトに似てない?」
 サクラの突然の発言に、ナルトが目を丸くする。
 「えー、全然似てないってばよ。それに花に似てるって言われても嬉しくないってば」
 「あら、そんなことないわよ。ね、サスケくんもそう思わない」
 「‥‥そうだな」


 サスケはしばし考えて、


 「黄色くて、ぼさぼさしてるとことか」 
 お日様色のふんわりした柔らかそうな姿。
 「踏んづけられても全然懲りないとことか」
 傷ついても辛くても、頭を上げ続ける意外な強さに驚かされて。
 「ぼんやりして何も考えてなさそうなとことか」
 傍にいると暖かい気分になって。
 「季節を間違えてるところもドベらしいよな」
 寄る辺無さそうにひとり膝を抱える姿に守りたいと思わせる。


 「そっくりじゃねえか」


 口元をつり上げれば、本人は微笑んだつもりでも、傍から見れば『不敵に笑う』としか思われないのが、サスケの不器用な表情筋の哀しさ。
 まして、さっきの喧嘩の余波が残っているナルトの目にどう映るかというのは、明々白々で。
 「サスケのばかやろー! 何でそーゆー言い方ばっかりするってばよ」
 「本当のこと言われて怒ってんじゃねえよ、ドベ」
 「‥‥‥やっぱ、おまえ、だいっきらい!」
 言うなり、ナルトはくるっと背を向けて走り出す。
 「ちょっとナルト! そっちは反対方向でしょ、どこ行くのよ!」
 「修行! 俺だっていつまでもドベじゃないってば! ぜってー、ぜってー、サスケなんかやっつけてやるってばよ!」
 今度こそ後も見ずに駆けていくナルトの背中を、サスケはただ見送った。
 オレンジ色のジャケットが夕日に溶けて見えなくなるまで。


 「‥‥馬鹿じゃねえか? 俺」
 子供の一人暮らしには広すぎるうちは邸には、これまた広すぎる庭がある。
 荒れ放題の庭の、それでも一番日当たりのいい場所に、サスケはしゃがみ込んでいた。
 「やっぱ馬鹿だよな」
 ため息をついて、サスケは盛り上がった土をシャベルでぽんぽんと叩く。
 そこに鎮座しているのは、植えかえられたばかりの黄色いタンポポ。
 小さな姿が隠れるくらい雑草が生い茂っていても、踏み付けられる心配のない場所で、安心したように風に揺られている。


 嫌いなんて言葉は山ほど言われて、でもやっぱり言われる度に胸が痛い。
 怒った顔ならそらで描けるほどなのに、笑った顔を正面から見たことがない。
 自分が悪いと言われればそれまでで。
 でも、せめて。


 大好きなあの子とよく似た花を。
 優しくて寂しいあの子のような花を。


 「やっぱ終わってんなあ‥‥」
 途方に暮れて呟いて、サスケは小さく笑った。




 はじめて書いたサスナルです。
 なんか、サスケ健気とゆーか情けないとゆーか。
 相方にたんぽぽは地中深く根っこをはるから移植はすげータイヘンだろと指摘されてしまった。
 そこはそれ、サスケくん、へたれでもエリートだから・・・



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