「おまえたち、それでいいの?」
その言葉に
黒髪の子供は薄く笑い、
金髪の子供は首を傾げた。
Children in the night
肌を滑る湿った感触にサスケは目を開けた。
「何してる」
問いかけに、ナルトは視線だけ上げて悪戯っぽく笑う。
そのままサスケの胸元に顔を埋めて、薄く走る古い傷跡をぺろりと舐めた。
子猫がじゃれるような、艶めかしいというには無邪気すぎる仕草に、サスケは苦笑する。
腰を掴んで軽い身体を引き上げると、紅い舌が肩口を這い。
僅かに滲みる感触に、その場所が先程ナルトが付けた爪跡だと知った。
「何やってんだよ」
繰り返し問いかけて、返らない返事にサスケは体勢を入れ換えると、ナルトの身体を組み敷いた。
誘ってんのかと耳元で囁くと、ナルトはくすぐったそうに目を細める。
「オレ、サスケとこうやってんのすき」
腕を首に回してサスケの身体を引き寄せると、ぴたりと合わせられた胸から二人分の鼓動が伝わる。
すりすりとサスケの頬に頬を寄せて、ナルトは微笑んだ。
「すごくほっとする」
「そうか」
「でもさ、何でカワイソウなことなんだってば?」
頬に触れる手をちろっと舐めて、ナルトはサスケを見上げた。
「おまえたちは、傷を舐め合ってるだけだよ」
そう言ったのは子供達の数少ない保護者の一人。
いつも飄々とした態度を崩さない上忍が、珍しく感情を露わに痛ましげな視線を向けた。
何でだろうとナルトは思う。
ずっと里の嫌われ者で、誰も必要としてくれなかった化物憑きの自分。
やっと「さびしい」を知ってる人に出会えて、やっと一人じゃなくなったのに。
何がいけないんだろう。
だって、こんなに嬉しいこと今までなかった。
さびしい同士触れ合うことであったかくなれるなんて、全然知らなかった。
それを欲しいと思うのはカワイソウ?
欲しいものくれないくせに、何でそんなこと言うんだろう。
馬鹿馬鹿しくてサスケは嗤う。
異端の子供を排除したのはそっちのくせに。
臭いモノにまとめて蓋かは知らないが、ご丁寧に一緒の班にまでしてくれて。
あのドベの中の孤独に気付かないとでも思ってた?
やっと見付けた同じニオイのする相手、逃す筈がない。
この結果が予想できなかったなんて言わせない。
それとも分かっていても、いざそれを目の当たりにするとなけなしの良心が痛むのか。
全くどいつもこいつも馬鹿ばかり。
忌むべき化け物を身に飼う子供が一人。
畏怖される血を受け継ぐ子供が一人。
ひとりぼっちの子供が二人。
愛されることを知らない子供と、愛する者を奪われた子供が出会ってしまったら。
どうなるかなんて、分かり切ったこと。
「何でかなあ?」
心底不思議そうにナルトは首を傾げる。
「そりゃ、あんまりいいことじゃないかもしれないけど」
「馬鹿だからだろ」
「先生はバカじゃないってば!」
「馬鹿なこと言う奴は馬鹿に決まってる」
あっさり言い捨てて、サスケはナルトの肌に唇を寄せる。
白い肌には掠り傷ひとつなく、代わりにあちこちに散らばる紅い痕に舌で触れた。
先程付けたばかりの徴。放っておけばすぐに消えてしまうだろうそれに、再び刻み込むように一つ一つ口付ける。
サスケが触れる度にナルトの身体はぴくんと揺れ、白い肌が徐々に上気し始めていく。
最後に頬の両側に走る痣を舐め上げて、サスケはナルトを見下ろした。
「こうしてると気持ちいいんだろ。だったらいいじゃねえか」
いけないことだろうが憐れむべきことだろうが、そんなことは関係ない。
何も分からない奴らの言うことなんか、無視してしまえばいい。
「うん。・・・サスケは?」
応えの代わりに唇を塞ぐ。
舌先で歯列をなぞると噛み締める力はすぐに緩み、すかさず侵入してくるぬめりを小さな舌が自ら絡め取った。
絡み合う吐息の熱が徐々に高くなり、合わさった箇所から響く音がそれを助長する。
互いの身体の高まりを感じて、回した腕に力を込めた。
感じるのは熱い身体。
聞こえるのは声と吐息。
見えるのは快楽に染まった表情。
同じものを見て、聞いて、感じて、そして辿り着くために二人は何度も抱き締め合う。
・・・決して一つにはなれないと知っているけれど。
滅びる寸前の生き物のように、世界の片隅で身を寄せ合う。
抱える孤独は似ているようで、同じである筈はなく。
寄り添って、抱き合って、なお残る胸の空虚。
目を逸らすには冷たすぎるそれを埋められるのは、それでも互いの体温の他にはなく。
何も持たない子供達は、二人でいても足りない物は多すぎて。
舐め合う先から新しい傷が増えていくのは分かっている。
それでも分かち合えるのは互いしかないから。
癒えない傷も二人なら、僅かでも痛みを忘れられる。
(オレにはおまえしかいないから)
(オレはおまえしかいらないから)
代償行為なんて、誰かが言っても。
すべてを晒すのも、触らせるのも、ただ一人と決めて。
どうして、それが愛じゃないなんて言える?
「気持ちいいだろ?」
「うん、あったかい」
「他に何かいるか?」
「・・・サスケは?」
「ああ、オレも・・・」
闇に紛れて共犯者の笑みを交わし、
子供達は抱き合って眠りについた。
やさぐれた話にしようとして失敗。何とも中途半端ですね。
目指したのは「恐るべき子供達」の世界だったんですが・・・。
この二人、完全には開き直れないだろうから、まいっか。(いいのか?)