雨は止まない(DISTANCE-17)
家には帰ってなかった。
ラーメン屋にもいなかった。
修行場にもイルカん家にもいない。
あいつ、どこいきやがった。
ぽつり。
雨が降ってきた。
アカデミーにもいない。
・・・会いてえ、よ・・。
大粒の激しい雨。帰るなら家はすぐ。
だけど、きっと、あいつもこの雨の中にいる。バカだから、多分。
傘なんかささずに。すぐ熱出すくせに。
だから、早く探してやんねえと。
手をひいてやらねえと。
俺がいないと、てめえは、だめなんだよ。
人のない通り、つい、と目をやると黄色と橙。
暗い灰色の街の中、そこだけが明るくて。
見つけてくれといわんばかりのあいつの色。
だけど、ふ、と消える。
・・・?
走っていくと、電柱の陰に隠れたつもりのナルト。
「おい・・・?」
話し掛けるとびくっとして走って逃げる。
ばしゃばしゃと雨をはねて、追いかける。
ばか、そこは袋小路だ。
一応ドベでも忍者の端くれ。
塀を飛び越えて逃げたりしないように追い詰めて。
「おい、ナルト!」
「ひ、人違いだってばよ!!」
顔を覆う。泣いてたのか?
・・・・会いたくないのは分かるが、もっとましなウソをつけ。
「・・・うずまきナルトに話がある。しらねえか?」
「あ、あっちいったってばよ!!」
このバカ。ウスラトンカチ。脳みそ米粒大!
「・・・そうか、あっちか。」
ぐいっと手を引いて、そのまま引きずるように歩き出す。
「いた、いたい、らんぼーもの!ばか、あほ、はなせ!」
無視してそのまま歩く。
「ここは・・?」
大きな旧家。ガラガラと戸を開け、ようやく手を離す。
「俺んち。ちょっと待ってろ。」
ばたばたと奥へ走って、沢山のタオルを持って戻ってくる。
「とりあえず拭け!」
自分も髪の毛をタオルにくるみながらいう。
適当に拭き終えたところで、風呂場に直行させて、
「風邪引くからシャワー浴びてこい。」
また、はしって、着替えをとりにいく。
「ちゃんとあったまるんだぞ!」
念をおして。
それから、やかんを火にかけて、自分も服を着替える。
・・・・手間のかかる・・・
濡れた髪をタオルで拭きあげながら、溜息をついた。
久々で忘れてたけど。アイツの相手は覚悟がいる。
目を離さずに。側にいて。世話してやって。
しかも、あんなウスラトンカチ。
・・・ホント、俺以外の誰が、あいつの面倒見れるって言うんだ。
こぽこぽこぽ。
風呂から上がった客に茶を入れる。
ず・・一口すすって。
「あち!」
「茶はあついもんだろーが。」
まったく、あの袋小路でいっそ告白しておけばよかったものを。
風邪引くから、とか。
いくら土砂降りの雨の中で人通りが全くないとはいえ
忍びの里の往来なんぞでんなこと言えるか、とか。
そんなの口実なのに言い出せなくて、うちまで連れて来て。
客間で正座して茶なぞ出して。
なにをやってるんだ、うちはサスケ、とは思うんだが。
「サスケ」
ナルトがぎゅう、と手を握ってくるから。思わず息を呑む。
「おまえの手、冷たいってば。風呂浴びてこいよ。風邪引くぞ!」
「いいんだよ、おれは!どっかの誰かみたいに熱出したりしねえから。」
無駄に気をそらさせるな!このウスラトンカチが!
「お前、何でそんなすぐ怒るんだよ!」
「怒ってねえよ」
「怒ってるってば」
「怒ってねえって言ってんだろ!」
「それ、怒ってるっていうんだってば!!」
続きを返そうかと思ったが、ぐっとこらえる。
これじゃけんかになる・・。それじゃいつもと同じ。
「・・・話がある。ちゃんと聞け。」
思わず正座し直して。すると向こうも正座して。
じっと睨んでしまって、むこうも臨戦態勢。
いわなきゃ。サクラにもヤキ入れられたろ?気分は清水の舞台。
聞こえるのは雨が雨どいを伝う音と、古い時計の時を刻む音。
「・・・おれは、・・」
「聞かない!」
「なに・・」
「おれ、今聞きたくない!」
「・・ナルト・・」
「俺、サクラちゃんに振られて・・・振られたばっかで・・・
サクラちゃんと、ふたり、ようやく分かったのに・・
お前のこと、聞きたくないってば!」
「・・・」
そんなに、まだ、サクラが好きなのか?
言わないほうがいいっていうのか?
また、俺は言えないのか?
だけど、このまま、また、失うなんていやだ。
「ナルト・・」
「・・・サクラちゃんと付き合うんだろ?」
・・・この、極鈍!ウスラトンカチ!
「・・・サクラは、関係ない。」
まだ、誤解したままなのか。頭いてえ。
「おれ、・・・だって・・・」
「だから、とにかく、人の話を聞け・・」
「おれは、おまえが、好きだ。」
ナルトが目を丸くして。
ひたすら続く長い沈黙。
「・・・信じられない・・・」
ようやく、ぽつり、とナルトが呟く。
雨は止まない。
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