花のささやき(DISTANCE-4)
「ナルト!こっちよ。」
手を上げて、走ってくるナルトに声をかける。
ことさら大きいというわけではなく、ただしみんなが振り返る程度に。
「ごめん、待った?サクラちゃん」
「ううん、さあ、今日1日買い物つき合わせるわよー。」
「げー。」
木の葉の一番の目抜き通りで、待ち合わせして。
一番人通りの多い道を選んで。二人でデート。
ほら、聞こえる?みんながうわさしてるよ。
聞こえないように、だけどこれみよがしに。
「あんな、・・・と。」
「・・・にたぶらかされて。」
「かわいそうに。」
嫌な人達。最低の人達。
ためらいがちになるあなたの手を握ったままで、
「気にすること、ないわよ。」
「だけど・・」
「何も悪いことしていないんだから、堂々としてればいいのよ。」
そう言うと、こくんとうなずいて、小さく笑う。
「俺は、へいき、だけど。サクラちゃんが悪く言われるの、やだ。」
「わたしは平気よ。」
「ほんと?」
「もう。気にすることないって。さ、いこ。」
それは、事実。私はあなたを思ってなんかいないから。
ただ、あなたの心を傷つけるためにしてることだから。
嫌な私。最低な私。だけどあなたは気づかない。
「ありがと、サクラちゃん」
極上の笑みで。私に返す答え。
「里一番の嫌われ者でもいいじゃない。」
追い詰めるために選ぶ言葉は、あなたにも分かるように。
「わたしが、いるわ。」
私を思いやろうなんて、バカなことやめてよね。
たった一人を振り向かせたくて、
選んだのはあなたを傷つけること。
「ま、まだ、買うのー?」
「何いってんのよ、久々のお休みなのよ?」
ほんと、買い物なんて久しぶりだから。
楽しいなんて思うのは、きっとそのせい。
あなたの一挙一動に、目を奪われることがあるなんて、気の迷い。
そんなに、うれしそうに、だから、しないで。
買い物してご飯食べて。
あっという間に、時間が過ぎて。
「楽しかったわ」
「俺もだってばよ。」
荷物を両手いっぱいに抱えたまま、笑いかけるあなたに。
家に近い公園で、軽くキスをした。
前に、サスケ君と触れたことのあるあなたの唇に。
あれは、事故。
だけど本気ならきっと、「彼」ならば避けられたはずの。
「・・・さ、さくらちゃ・・」
あら、声裏返っちゃって。
「荷物落とさないでよ。」
「・・・で、でも」
「動かないで」
そういって、硬直したままのナルトの首筋に口付ける。
「あんたの細い首。好きなのよね。」
あなたに、しるしをつけてあげる。
たったひとつ、だけど、きっと彼ならば気づく。
「ここまでで、いいから。じゃあね。」
固まったままのナルトから荷物を取ると、振り返らずに走り出す。
あなたの手首を縛ってあげる。
きれいに跡が残るように。
あなたの胸元に爪を立ててあげる。
紅く、誰からも分かるように。
彼が、一瞬でも私を見てくれるように。
あなたにも、甘い夢をみせてあげる。
「・・・最低、よね。」
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