容れもの 序 3    カカシ






ひどく霧の深い日だった。

「よう、ドベ。」
声がして、修行中の手を止める。
「サスケ?」
だけど、だれもいない。空耳。
「ナルト」
今度は後ろから。振り返るとすぐ後ろにいて。
「会いたかった・・・。」
背中から抱きすくめられて。一瞬どきりとして。
すかさず振り向いて、一瞬のためらいの後クナイで心臓を刺す。
短い悲鳴とともに霧の中に掻き消えた。

幻。

九尾の見せる幻影。
「もう、おれ、里のみんな、ころしちゃった、ってばよ・・・・。」
手に残る、重い感触。泣きそうな顔で、呟く。
サスケはもう、何度、しんだろう。
それはもちろん実体ではないとはいえ、ひどく心を傷つけていく。
夢でも、九尾に食われ、あるいは自身が九尾として村を破壊する。
もう、自分が何なのか、だんだんわからなくなって。
もう九尾なのかもしれないと思って。
ぎゅ、っとポケットの中の、ちいさなお守りに触れる。
サスケがくれたお守り。
ぎゅってにぎってると、すこしだけ、おちついて。
「どんなになっても、おまえは、おまえだろ。」
そういってくれた。
だけど、いつか、九尾になっても、とはきけなかった。

はじめの1体目を倒してから九尾が邪魔をし始めたのだと、イルカ先生が説明する。
イルカ先生は、もうしばらくしたら、俺はこれなくなるんだ、といった。
2体目までいったら、安全のため、暗部の特殊チームに変わるらしい。
「・・・・さみしい、ってばよ。」
「うん、ごめんな。ナルト。」
だけど、すこしほっとしていた。
イルカ先生の幻影は、殺しても大丈夫。

眠れるのは、カカシ先生が来てくれるときだけ。
封印を作って、それから、ぎゅうってだっこしてくれて、
そのまんま、カカシ先生の胸で眠るときだけ。
「カカシせんせも来れなくなる?」
「んー、大丈夫でしょ。俺いないと眠れないんだし。」
「・・・・・よかった・・・」
そういうと、もう、寝息をたて始めていた。
「・・・ずっとついててあげれると、いいんだけどね。」
せめて朝までは、このこが安らかに眠れるように。
ナルトは気づかないのかもしれないが、この街は九尾の力で満ちている。
ずっとついていてやれないのも、毎日はこれないのも、その毒気のせい。
カカシでも、1日がやっと。しかも3日は空けないと毒気が抜けず、これない。
そんな中に、この子供はもう3ヶ月もいるのだ。
かける言葉もみつからず、頭をくしゃくしゃとなぜてみる。
袖を強く掴んだまま寝ている子供は、その運命に恨み言のひとつもいわず。
「・・・おまえはえらいよ」



「おやすみ、ナルト」













      序 4(サクラ)へ